その情報共有、本当に安全ですか?
副業・フリーランス・スモールビジネスが増える今、「秘密保持契約書(NDA)」の重要性が高まっています。AIツールを使って外部と情報共有する機会も増え、思わぬ情報漏洩リスクが潜んでいます。NDAは、取引相手との信頼関係を守るための“基本の契約書”です。今回は、行政書士の立場から、NDAの基礎知識から作り方、注意点までをわかりやすく解説します。
そもそも「秘密保持契約書(NDA)」とは?
NDA(Non-Disclosure Agreement)の意味と目的
NDAとは、契約当事者が共有した秘密情報を第三者に漏らさないことを約束する契約です。日本語では「秘密保持契約」や「守秘義務契約」とも呼ばれます。企業間取引や業務委託、共同開発など、取引前や業務中に重要な情報を共有する際に締結されます。
なぜ今、NDAが重要なのか?
情報漏洩は、信用の失墜や損害賠償につながる重大リスクです。副業や小規模ビジネスでも、取引先との関係を守る上で欠かせません。NDAは「相手を信頼していない」から結ぶのではなく、「信頼関係を明文化する」ための仕組みです。
秘密保持契約書に入れるべき基本項目
① 秘密情報の定義
どの情報を秘密として扱うかを明確にします。曖昧にすると「これも対象なのか?」という争いの原因になります。技術情報、顧客情報、価格条件など、具体例を明記するとよいでしょう。
② 秘密情報の扱い方
秘密情報の管理方法を定めます。誰が閲覧できるのか、電子データ・紙資料など形式ごとの扱いも明確にしておくことが大切です。
③ 除外情報
すでに公知の情報や、受領前に知っていた情報などは対象外にすることが一般的です。これを入れておかないと、契約の制約が過剰になります。
④ 契約期間と秘密保持期間
契約の有効期間と、守秘義務が続く期間を定めます。一般的には契約終了後2〜5年とされます。無期限にする場合は、目的を明確にしておく必要があります。
⑤ 違反時の対応(損害賠償・解除など)
違反があった場合の対応を定めます。損害賠償や契約解除の条件を明記しておくことで、トラブル発生時に冷静に対応できます。
行政書士が見る“実務でありがちなNG例”
① ネットの雛形をそのまま使っている
インターネット上の雛形をそのまま使うと、あなたのビジネスの実態に合っていないことがあります。業種や契約目的に応じてカスタマイズが必要です。
② 守秘義務の範囲が広すぎる・狭すぎる
範囲が広すぎると相手が契約をためらい、狭すぎると守れない情報が発生します。双方が現実的に運用できるバランスが重要です。
③ 電子契約ツールの利用に関する誤解
電子契約も有効ですが、「電子署名」と「スキャンした署名画像」は法的効力が異なります。証跡の残し方や保管方法にも注意しましょう。
私の実体験 初めてNDAを作ったときの不安
私自身、行政書士になる前に、独自に開発したシステムを他団体にライセンス提供するため、初めて契約書を作成したことがあります。当時は法務の知識も経験もなく、書籍で勉強しながら不安の中で作業を進めました。あのとき、「自分で作る」ことの難しさと、「守るべき情報を明確にする」ことの重要性を強く実感しました。その経験が、今の私の活動の原点となっています。
行政書士が教える、NDAを安心して作る3つのポイント
① 目的と相手に合わせて“柔らかく作る”
取引先や協業先など、相手との関係性によって契約書の文言を調整します。厳しすぎる契約書は相手の警戒を招くことも。信頼関係を前提にした“現実的なNDA”が理想です。
② 契約書の内容は「リスクの線引き」
NDAは相手を疑うためのものではなく、万一のときに「どこまで責任を負うか」を明確にするものです。お互いの安心のために、線引きを文書化することが目的です。
③ AIツールを活用してドラフトを効率化
ChatGPTやGeminiなどのAIツールを使えば、初稿の作成は短時間で可能です。ただし、AIが出力する文面は一般論に過ぎないため、あなたのビジネスに即した形にカスタマイズする等、最終確認は自分の目で(または専門家の目で)行うことが重要です。
まとめ NDAは「信頼関係の証明書」
NDAは相手を疑うためではなく、信頼を“見える化”するため書面です。情報を守ることは、自分と相手のビジネスを守ること。これから取引を始める方、協業を検討している方は、ぜひNDAを整えておきましょう。小さな契約書1枚が、大きなトラブルを防ぐ力になります。
ご相談のご案内
秘密保持契約書(NDA)をはじめ、業務委託契約や取引基本契約など、契約書全般の作成・チェックをサポートしています。AIツールを活用した効率的なドラフト作成と、法的観点からの最終チェックを組み合わせた実務的なサポートが可能です。副業・スモールビジネスの契約リスクを未然に防ぐお手伝いをいたします。
本日はビジネスの信頼を守る「契約」の基本についてお話ししました。
明日金曜日は、AIやテクノロジーを活用して、日々の業務を効率化し、成果を高める方法について解説します。
特に、ChatGPTやGeminiなどを使った実務の工夫や、行政書士としての活用事例もご紹介しますので、ぜひまたお越しください。
