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【2025年最新版】報酬未払いを防ぐ“契約の型”|準委任と請負の違いを徹底比較【IT・デザイン案件対応】

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フリーランスとして活躍するITエンジニアやデザイナーにとって、「自分のスキルで価値を提供できる」ことは、働く喜びそのものです。

しかしその一方で、報酬未払い・支払遅延という深刻なトラブルが後を絶ちません。
ある調査では、フリーランスの約4割が報酬トラブルを経験しており、「納品したのに支払われない」「検収がいつまでも終わらない」といった悩みは決して珍しくありません。

この問題の多くは、契約書の段階で「契約の型」が曖昧なことから始まっています。
特に、準委任契約請負契約の違いを理解していないまま業務委託契約を結ぶと、“支払の根拠”が不明確になり、未払いリスクが高まるのです。

この記事では、行政書士として多くの契約書作成・レビューを行ってきた立場から、両契約の違いを実務目線で整理し、報酬未払いを防ぐための具体策をわかりやすく解説します。

目次

業務委託の基本整理:準委任と請負、どこが違う?

実は、「業務委託契約」という名前の契約は民法には存在しません。
実際には、「請負契約」または「準委任契約」に分類されます。

それぞれの目的・報酬の根拠・責任範囲は次のとおりです。

項目請負契約(民法第632条)準委任契約(民法第656条)
契約の目的成果物の完成(Webサイト制作・アプリ開発・デザイン納品など)業務の遂行(運用保守・コンサル・調査・SNS運用など)
報酬の対象完成した成果物に対して支払われる実施した業務・工数・作業時間に対して支払われる
完成義務成果物の完成義務あり完成義務なし(善管注意義務をもって遂行)
契約不適合責任成果物に不備がある場合は責任を負う原則なし(成果物を約束していないため)
指揮命令発注者の直接の指揮命令は受けない同様に受けないが、協議・報告義務あり

つまり、「完成で報酬」か、「遂行で報酬」かが決定的な違いです。
実際の契約書でここを誤ると、「報酬が発生しない」と言われる原因になります。

💡補足:実務上は「成果完成型準委任契約」など、請負的要素を持つ柔軟な契約も登場しています。


“誤解”が生む報酬トラブル例

① 実態は準委任なのに「成果がないから支払わない」

システム保守やコンサルなど、実際には成果物を納品しない業務なのに、クライアントが「成果が出ていない」として報酬支払いを拒むケース。

→ 契約書に「本契約は準委任契約とし、業務遂行に対して報酬を支払う」と明記。

対応記録・作業報告書を残すことで、支払根拠を明確にしましょう。


② 請負なのに検収ルールが曖昧で“確認中”が続く

納品後、発注者からの検収連絡が来ないまま支払いが止まってしまうケース。

→ 「納品日から10営業日以内に合否を通知し、期間内に通知がない場合は合格とみなす(みなし検収)」を明記。

この条項ひとつで、「無限検収待ち」を防げます。


③ 成果完成後に“減額交渉”

納品が終わってから「予算が厳しいので半額で」と言われるパターン。

→ 「検収完了時に報酬支払い義務が確定する」

「合意なき減額は無効」といった条項を入れることで防止できます。


準委任契約を正しく使う:支払い設計と柔軟性

準委任契約は、完成よりもプロセスを重視する契約。
その分、柔軟に進めやすく、継続案件に適しています。

履行割合型(多くの常駐・運用案件に対応)

業務遂行の度合い・稼働時間に応じて報酬を計算。
→ 月末締・翌月末払い、作業報告書・稼働ログを添付。

成果完成型(マイルストーン支払い)

調査報告・中間レビューなど、区切りごとに支払い。
→ 「○○完了時に○万円」など、請負と混同しないよう“完成義務なし”を明記。

⚠️注意:常駐型業務で発注者の指揮命令下にある場合、労働者派遣や雇用関係とみなされるリスクもあります。実態と契約類型の整合性を確認しましょう。


請負契約で守るべき3つの安全ポイント

請負契約は“完成引換え”が原則。
だからこそ、支払確定条件を明確化しておくことが重要です。

① 検収基準+期限+みなし検収

「納品から○営業日以内」「通知なければ自動合格」をセットで記載。
永遠に“確認中”にならない仕組みを作りましょう。

② 著作権の譲渡時期

報酬完済をもって著作権を譲渡」と明記。
未払い時に権利だけ取られるリスクを防げます。

③ 損害賠償の上限

賠償責任は「直接損害に限定」「上限=契約金額」と記載。
万が一のトラブルでも過大なリスクを避けられます。


フリーランスを守る6つの予防策

  1. 契約書を必ず交付・保存
     紙でも電子でもOK。クラウドで一元管理を。
  2. 支払期日・方法・手数料負担を固定
     検収後30日以内、月末締翌月末など「数式化」する。
  3. 業務範囲・修正回数を明記
     仕様書・見積書を添付し、“追加作業の境界”を明確に。
  4. やり取りは全て記録に残す
     チャット・メール・議事録は、万が一のときの“防御資料”。
  5. 前払・分割払いの導入
     着手30%+中間40%+納品30%など、キャッシュフローを守る。
  6. クライアントの信頼性チェック
     会社情報・登記・口コミを確認。取引前のリスク調査を習慣化。

フリーランス保護新法で強化された保護

2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」では、
発注者に対して次の義務が課されています。

  • 契約書面(電子含む)の交付義務
  • 報酬支払期日の設定義務(原則60日以内が目安
  • 一方的な契約変更・解除の禁止
  • 不当減額の禁止
  • ハラスメント防止義務

これにより、契約書がない・支払期日が未設定といった“グレー取引”は法令違反となります。
つまり、フリーランス側から「契約書をください」と求めることは法律が認めた正当な権利です。

🧭 参考:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(令和6年11月施行)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html


未払いが発生したときの冷静なステップ

  1. 請求漏れや納品不備がないか確認
  2. 丁寧に支払確認メールを送る(記録を残す)
  3. 応じない場合は内容証明で督促
  4. 支払督促・少額訴訟など法的手段を検討
  5. 弁護士へ相談

まとめ:契約の“型”を整えれば、未払いは防げる

報酬未払いの多くは「契約の型が合っていない」ことから生じます。
請負と準委任、それぞれの特性を理解し、支払いの根拠を設計し直すことで、トラブルは大幅に減らせます。

契約書を整えることは、相手を疑う行為ではなく、自分の仕事を正当に評価してもらうための準備です。

「自分の契約書が実態と合っているか確認したい」
「支払・検収・著作権条項を整えたい」
「フリーランス新法に対応した契約にしたい」

そんなときは、ぜひご相談ください。
行政書士として、契約書雛形の作成支援・条項整理・電子契約導入サポートを行っています。
※法的助言や紛争対応は弁護士の業務範囲となります。

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