インターネット上でビジネスを始めるとき、多くの方がつまずくのが「法律上の表示義務」です。
副業や小規模事業でも、ホームページやLP(ランディングページ)を公開して情報発信をする以上、一定の法的ルールに従う必要があります。
特に、「プライバシーポリシー」と「特定商取引法に基づく表記」は、すべての事業者が整備すべき基本項目です。
これを怠ると、知らぬ間に“法律違反”になってしまうこともあります。
ここでは、行政書士として多くのご相談を受けてきた立場から、これら2つの表示義務の基本と、整備のポイントをわかりやすく解説します。
プライバシーポリシーとは?
プライバシーポリシーとは、サイト訪問者や顧客から取得する「個人情報の取り扱い方針」を定めた文書です。問い合わせフォームやメルマガ登録、商品購入など、どんな形であれ個人情報を取得する場合には、その利用目的や管理方法を明記する必要があります。個人情報保護法の観点からも、この表示は非常に重要です。
たとえば、以下のような内容を記載します。
- 取得する個人情報の種類(例:氏名、メールアドレス、住所など)
- 利用目的(例:問い合わせ対応、商品の発送、サービス案内など)
- 第三者提供の有無
- 情報の安全管理措置(例:SSL通信の導入や社内管理体制)
- 開示・訂正・削除の手続き方法
- クッキー(Cookie)やアクセス解析ツールの使用について
特に最近は、Googleアナリティクスや広告用タグなどの外部サービスを利用している場合、その旨を明示することが求められます。「Cookieを使用してアクセス状況を分析しています」などの一文が必要です。
注意すべきは、「テンプレートをそのまま使うことの危険性」です。業種やサービス内容によって取扱う情報の性質が異なるため、自社の実情に合った内容にしなければ、形だけ整っていても実態に即していない場合があります。特にAIツールやクラウド型フォームサービスを利用する場合、その情報の保存先や利用範囲をしっかり確認しておくことが大切です。
特定商取引法に基づく表記とは?
「特定商取引法に基づく表記」とは、ネット上で商品販売やサービス提供を行う際に義務づけられた“事業者情報の開示”です。消費者を保護するために、販売者の身元や取引条件を明確にする目的があります。オンラインショップだけでなく、デジタルコンテンツ販売やセミナー受講料の徴収なども対象になる場合があります。
最低限、以下の項目は必須とされています。
- 事業者の氏名または名称
- 所在地
- 連絡先(電話番号・メールアドレスなど)
- 販売価格および支払方法
- 商品の引渡し時期
- 返品・キャンセルに関する特約
「個人でやっているから住所は出したくない」という相談をよく受けますが、原則として所在地の記載は必須です。どうしても公開を避けたい場合は、バーチャルオフィスなど合法的な代替手段を検討するのが現実的です。また、連絡先として「メールフォームのみ」というケースも見かけますが、原則は電話番号の記載が望ましいとされています。
さらに、販売形態によっては追加の記載が必要です。たとえば、定期購入やサブスクリプション型のサービスでは、「契約期間」「中途解約の可否」「自動更新の有無」などの説明が義務づけられています。これを怠ると行政処分の対象になることもあるため、細かい部分まで確認しましょう。
よくある違反・トラブル事例
現場でよく見かける違反やトラブルの例を挙げます。
- LPやInstagramから商品販売しているのに、特商法表記がない
- 無料相談フォームに個人情報の取り扱い説明がない
- 「返品不可」とだけ書いて詳細条件がない
- 運営者情報がニックネームや屋号のみで実名が不明
これらは一見小さなことのように思えますが、消費者庁や経産省からの指導対象になることがあります。また、購入者からのクレームや返金トラブルに発展するケースも多く、信頼を大きく損ねかねません。行政書士として感じるのは、法令遵守だけでなく「安心して取引できる事業者」としての信頼性を示すことが、今後ますます重要になると感じています。
まず何から整えるべきか
初めて整備する方は、次のステップで進めるとスムーズです。
- 自社でどんな個人情報を取得しているか洗い出す
→ 問い合わせフォーム、LINE公式アカウント、予約システムなどをチェック。 - 取扱いの流れを整理して、プライバシーポリシーを作成
→ 情報を「どこで集め」「どのように利用し」「どこに保管するか」を明確に。 - 商品販売がある場合は「特商法に基づく表記」を用意
→ テンプレートを使う場合でも、自社サービスに合わせて修正することが大切です。 - サイトのフッターやメニューにリンクを設置して公開
→ 訪問者がいつでも確認できる位置に配置しましょう。
行政書士としての立場から言えば、「一度作って終わり」ではなく、ビジネス内容が変わるたびに見直すことが重要と考えています。
販売形態の変更、外部サービスの導入、AIツールによるデータ収集など、新しい仕組みを導入する際は、その都度内容を更新する必要があるかもしれませんので、お気軽にご相談ください。
まとめ 〜信頼されるサイト運営の第一歩〜
「プライバシーポリシー」と「特定商取引法に基づく表記」は、単なる“法律上の義務”ではなく、あなたのビジネスの信頼を守るための盾でもあります。誠実に情報を開示し、明確なルールを設けることが、長期的に見て顧客からの信頼を築く最善の方法です。
これらを整備することで、法律遵守はもちろん、トラブルの未然防止にもつながります。特に個人事業主や副業でビジネスを始めたばかりの方にとっては、「小さなサイトだから大丈夫」と思わず、最初からしっかりと法的基盤を整えることが大切です。
