その苦労は、「コスト」ではなく「投資」になる
ここまでお読みいただいた経営者の皆様は、日本版DBSの認定取得が、決して生易しい道のりではないことを痛感されているはずです。
- スタッフ全員の犯歴確認
- 犯歴発覚時に備えた就業規則の抜本改定
- 高度なITセキュリティと情報管理規程の構築
「こんなに大変なら、やっぱりやめようか……」
そう心が折れかけた方もいるかもしれません。
しかし、この苦労は単なる「コスト」ではありません。
あなたの事業をこの先10年、20年と存続させるための、最も確実な「投資」となり得ます。
少子化が進み、学習塾やスポーツ教室の競争が激化する中で、保護者は何を見て教室を選ぶのでしょうか?
カリキュラム? 料金? 最後に選ばれる基準は「ここなら我が子を安心して預けられる」という「信頼」なのかもしれません。
今回は、認定取得までの具体的なロードマップと、取得後に手に入る絶大なメリットについてお話しします。
ゴールまでの全体像(ロードマップ)を把握する
認定取得までの道のりは、登山に似ています。まずはロードマップを確認しましょう。
多くの事業者が誤解しているのは、「申請書を出してからがスタート」だと思っている点です。
実際は逆です。「申請書を出すまでの準備期間」が、全行程の8割を占めます。
【標準的な認定取得ロードマップ】
- 経営判断・体制構築(1〜2ヶ月目)
- 「認定を取る」という意思決定
- 社内プロジェクトチームの結成(管理責任者2名の選定など)
- 専門家(行政書士・社労士等)との契約
- 社内ルールの整備・規程作成(2〜4ヶ月目) ← ここが最大の山場!
- 就業規則の改定(労務リスク対策)
- 児童対象性暴力等対処規程の作成(安全確保のルール)
- 情報管理規程の作成(ITセキュリティ対策)
- これらに基づく、現場の運用フロー構築
- 従業員への説明・研修(5ヶ月目)
- 新しいルール(就業規則、DBS確認フロー)の周知
- 既存スタッフからの同意取得(ここが難航しやすい)
- 認定申請(6ヶ月目)
- こども家庭庁へ申請書類一式を提出
- こども家庭庁へ申請書類一式を提出
- 審査期間(7〜8ヶ月目)
- 国の審査(標準処理期間は1〜2ヶ月程度ですが、補正があれば伸びます)
- 国の審査(標準処理期間は1〜2ヶ月程度ですが、補正があれば伸びます)
- 認定取得・運用開始!
いかがでしょうか。順調にいっても半年がかりのプロジェクトです。 制度開始(2026年末予定)に間に合わせるためには、逆算すると、今すぐ動き出さなければギリギリであることがお分かりいただけると思います。
申請直前チェックリスト:この書類、揃っていますか?
いざ申請という段階になって、「書類が足りない!」と慌てないために、主要な提出書類をチェックしておきましょう。 これらは単なる「紙」ではなく、あなたの会社が安全体制を構築した「証拠」です。
【主な必須書類チェックリスト】
- [ ] 認定申請書(基本情報)
- [ ] 定款・登記事項証明書(法人の場合)
- [ ] 役員名簿
- [ ] 児童対象性暴力等対処規程
- (安全確保措置、早期把握、相談対応、研修などのルールを定めたもの)
- [ ] 情報管理規程
- (犯歴データの取り扱い、セキュリティ体制を定めたもの)
- [ ] 就業規則(写し)
- (犯歴判明時の対応などが適切に盛り込まれているか)
- [ ] 認定基準に適合することを証する書類
- (体制図、研修計画書、相談窓口の案内など、実態を証明する資料)
前回までに解説した「規程類」が、審査の核心部分となります。
ここが形式的なものだったり、実態と合っていなければ、容赦なく不認定(または補正命令)となります。
苦労の先にあるもの:認定事業者の「特権」
この長く険しい道のりを乗り越え、晴れて「認定事業者」となった暁には、ライバルが決して真似できない強力な武器が手に入ります。
メリット①:国が認めた「認定マーク」の使用権
認定事業者は、内閣総理大臣が定める「認定マーク」を、看板、パンフレット、ホームページ、広告などに表示することができます。 これは、「国が安全体制にお墨付きを与えた」という最強の証明書です。保護者が教室比較サイトを見たとき、このマークがある教室とない教室、どちらの体験入会ボタンを押すかは明白です。
メリット②:国による「公表」
認定事業者の名称は、こども家庭庁のホームページ等で公表されます。 さらに、「現職者全員の犯歴確認が完了した」という事実も公表の対象となる見込みです。「ここは先生全員がチェック済みなんだ」という安心感は、何よりの集客効果を生みます。
メリット③:採用力の強化
「安全意識の高い職場で働きたい」と考える、質の高い講師やスタッフが集まりやすくなります。
逆に、やましいところがある人材は応募を避けるため、自然とスクリーニング効果が働きます。
まとめ:その山、ひとりで登りますか?
ここまで何回かに渡り、日本版DBSの導入について解説してきました。
この制度は、子供たちを守るための「希望の光」であると同時に、準備を怠った事業者にとっては「淘汰の波」となります。
やらなければならないことは山積みです。
法律の解釈、就業規則の変更、ITセキュリティの構築、そして膨大な申請書類の作成……。
これらを、日々の授業や教室運営と並行して、経営者一人で完璧にこなすことができるでしょうか?
もし少しでも不安を感じたなら、是非専門家を頼ってください。
行政書士は、許認可申請のプロとして、あなたの会社の「認定取得プロジェクト」をトータルで支援します。
- あなたの会社に合わせたロードマップの策定
- 難解な「規程類」の作成代行
- 社労士等と連携したチーム体制の構築
- 面倒な行政とのやり取りの代行
あなたは、面倒な手続きから解放され、「どうすれば子供たちが安心して学べるか」「どうすれば保護者に安心を伝えられるか」という、本業の経営戦略に集中してください。
日本版DBSの認定は、ゴールではありません。
子供たちと、あなたの事業の輝かしい未来を守るための、新しいスタートラインです。
共に、子供たちが安全に学べる社会を作っていきましょう。
