【基本編】認定を受けるための要件①|修業期間が6カ月以上あること

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この記事で分かること

前回のコラムでは、日本版DBS(こども性暴力防止法)において、学校などは「義務」である一方、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者は申請による「認定」の対象となることについて解説しました。

では、民間事業者が手を挙げれば、誰でも認定を受けられるのでしょうか?
実は、認定を受けるためには、法律で定められた「4つの要件」をすべて満たす必要があります

今回から4回シリーズで、認定の可否を分けるこの「4つの要件」について、一つずつ詳しく解説していきます。 第1回目となる今回のテーマは、事業の継続性を判断する「修業期間が6か月以上」という基準についてです。

結論

民間教育事業(学習塾等)が認定を受けるには、「標準的な修業期間が6か月以上」でなければなりません

これは単に「創業から半年経っている」という意味ではなく、「ひとりのこどもが、6か月以上にわたって継続的に通うことが想定されているプログラムか」という点が問われます。

したがって、1回完結のワークショップや、夏期講習のみの参加などは、原則として認定の対象外となります。

なぜ?

制度側の背景

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、こどもと密接な関係性を築く事業を対象としています。

性加害は、時間をかけてこどもを手なずけ(グルーミング)、信頼関係を利用して行われる特性があるため、法律では「継続性(継続的に密接な人間関係を持つこと)」を対象事業の重要な要素としています。その客観的な基準として「6か月以上」が設定されました。

現場側の事情

しかし、民間事業者のサービス形態は多様です。 「毎週決まった曜日に通う」スタイルだけでなく、「好きな時にチケットで参加する」「長期休暇だけ集中的に行う」といったサービスも多くあります。こうした事業者が「うちは対象になるのか?」と迷うケースが増えています。

日本版DBSの制度整理:期間要件のポイント

国のガイドライン案では、「標準的な修業期間が6か月以上」の判断基準として、以下の3つをすべて満たすこととしています。

  1. 期間:6か月以上の期間にわたって事業を実施していること。
  2. 頻度:その期間中に複数回、指導を行っていること(間隔は問わない)。
  3. 反復:その期間に行われる指導に、同一のこどもが複数回参加することが可能であること。

【ケース別】対象になる・ならないの具体例

1. 定期的な教室(学習塾・スイミング等)

  • 【対象】 週1回や月1回など定期的に開催され、同じこどもが継続して通うことが想定されている場合。これは最も典型的な認定対象です。

2. 短期のイベント・講習

  • 【対象外】 「夏休み昆虫採集イベント(1日のみ)」や「入試直前対策講座(2週間のみ)」など、単発で完結し、継続性が前提とされていないもの。
  • 【対象】 「夏休みにキャンプ、冬休みにスキー合宿」のように、一連の年間プログラムとして企画され、同じこどもが継続参加できる仕組みになっている場合。

3. チケット制・フリースクール

  • 【対象】 好きなに時に来られる形式であっても、チケットの有効期限が6か月以上あるなど、制度設計として6か月以上の継続的な利用が可能であれば対象となり得ます。

現場ではどう対応すべきか

自社のサービスが「単発の集まり」なのか、「継続的な教育・指導の場」なのかを精査する必要があります。

もし、単発イベントを主軸としている事業者が認定を受けたい場合は、単発イベントを「年間コース」の一部として位置づけ直し、継続的なカリキュラムとして再構築するといった工夫が必要になるかもしれません。

一方で、1日だけのゲスト講師による講演会などは、継続性がないため、そもそも日本版DBSの確認対象にはなりません。認定を受ける必要がない(受けられない)事業であることを理解し、性犯罪防止のためには別の安全対策(個室を作らない等)を講じることが肝要です。

行政書士の視点

「6か月」という数字は、「こどもとの信頼関係が構築され、支配的な影響力が生じるのに十分な期間」として設定されています。

認定申請時には、事業の継続性を証明するために「カリキュラム表」や「年間スケジュール」、「募集パンフレット(コース期間が分かるもの)」等の提出が求められる予定です。 「実態としてこどもが長く通っているか」も大切ですが、「事業の仕組みとして長期受講を前提としているか」が審査のポイントになります。

よくある質問

Q. 3ヶ月コースを2回更新して6ヶ月通う場合は?
A. 制度上、継続して更新することが前提となっている(同一のこどもが複数回参加可能である)ならば、対象となり得ます。

Q. 毎月違うテーマで1回完結のワークショップをやっています。対象ですか?
A. それぞれが独立したイベントで、参加者が毎回入れ替わることが前提なら対象外です。しかし、「会員制」などで同じこどもが継続的に参加する仕組みであれば、対象になる可能性があります。

Q. こども食堂で勉強を教えていますが対象ですか?
A. 食事の提供だけでなく、「学習支援」として継続的に(6か月以上)実施し、同じこどもが通ってくる実態があれば、民間教育事業として認定の対象になり得ます。

次に取るべき行動

自社の提供しているサービスやコースの「募集要項」や「カリキュラム」を確認し、標準的な受講期間が6か月以上となっているか確認しましょう。

次回は2つ目の要件である「対面指導」について詳しく解説します。

本記事の法令根拠と情報の取扱いについて

本記事で解説した内容は、現行の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(法令)、およびこども家庭庁が公表している情報(2025年12月上旬時点)に基づき構成しています。

現時点で明確になっている骨格情報に基づき解説していますが、制度の詳細、具体的な申請手順、情報管理措置の細目、および雇用管理上の詳細な留意点等については、今後策定される予定の内閣府令等の下位法令やガイドライン、そして年明けから本格化する全国説明会などの周知資料において明確化されることになります。

最新かつ詳細な情報については、必ずこども家庭庁のウェブサイトや今後公表される正式なガイドライン等をご確認ください

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