この記事で分かること
日本版DBSの「認定」を取得したいと考える民間事業者にとっての要件である、「6か月以上の修業期間」「対面指導」「指導場所」について、過去3回に渡り解説をいたしました。



最後のハードルとなるのが「指導者人数」の確認です。
「個人で経営している教室も認定を受けられるの?」
「週1回のアルバイト講師も人数に入れていいの?」
「夫婦2人でやっている塾は対象外?」
この記事では、指導者人数について、カウント方法や実務上の判断基準を解説します。
結論
民間教育事業(学習塾等)が認定を受けるには、「技芸又は知識の教授を行う者が3人以上」いなければなりません。
この「3人」には、正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣労働者、ボランティアも含めますが、もちろん実態として指導を行っている必要があります。 したがって、講師が自分1人だけの個人塾や、指導者が2名以下の事業者は、原則として認定を受けることができません。
なぜ?
制度側の背景
こども性暴力防止法では、学校などは義務対象ですが、学習塾などは「認定」を受けることで対象となります。
国は、認定の対象となる民間教育事業について、「学校や児童福祉施設等と類似の環境」であることを求めており、組織的・継続的な活動を行う上で最低限必要な体制として「3人以上」という人数要件を設定しました。
現場側の事情
しかし、小規模な事業者にとっては切実な問題です。「認定マーク」を取得して保護者の信頼を得たいと考えても、規模が小さいという理由だけで制度の蚊帳の外に置かれてしまう可能性があるからです。特に個人経営の教室などでは、この要件が認定取得の決定的な壁となります。
日本版DBSの制度整理:人数要件のポイント
法律および政令案では、認定を受けられる民間教育事業の要件として以下の基準が示されています。
当該事業において当該技芸又は知識の教授を行う者の人数が、政令で定める人数(3人)以上であること。
1. 誰をカウントできるか
雇用形態は問われません。直接雇用の正社員だけでなく、パート、アルバイト、さらには派遣労働者やボランティアであっても、実態として「技芸又は知識の教授(指導)」に従事している者であれば、3人のうちに含めます。
2. 誰はカウントできないか
「教授を行う者」という要件があるため、受付事務のみを行うスタッフや、送迎バスの運転手、清掃員など、指導に直接関わらないスタッフは、この「3人」のカウントには含めません。
3. 個人事業主の場合
法人格がなくても(個人事業主や任意団体でも)、代表者の定めがあり組織として活動していれば申請自体は可能です。しかし、指導者が「代表者1名のみ」や「代表者と講師1名(計2名)」の場合は、要件を満たさないため認定を受けられません。
現場ではどう対応すべきか
自社の指導体制が「3人以上」の要件を満たしているか、確認する必要があります。
もし現在2名で運営している場合、認定を受けるために無理に人員を増やすべきか、あるいは認定を受けずに運営を続けるか、経営判断が求められます。
注意が必要なのは、認定を受けた後に欠員が出て「3人未満」になってしまった場合です。要件を満たさなくなった場合、認定事業者は速やかに「廃止の届出」を行わなければなりません。要件を欠いているのに認定マークを掲げ続けることは法令違反となります。
行政書士の視点
「3人以上」という数字は、単なる頭数合わせではありません。 この制度は、事業者に対して「情報管理責任者の配置」や「各種規程の策定」、「安全確保措置の実施」など、組織的な対応能力を求めています。
もし、名義貸しなどで実体のないスタッフを人数に加えて認定を不正に受けた場合、それは「偽りその他不正の手段」として認定取消しの対象となり、公表されるリスクがあります。
小規模事業者の方は、無理に認定を目指すのではなく、まずは独自に性犯罪歴のない旨の誓約書を取得するなど、認定を受けずともできる安全対策から着実に進めることをお勧めします。
よくある質問
Q. 経営者(オーナー)も人数に入りますか?
A. 経営者自身が現場でこどもたちに指導(教授)を行っている場合は、1人としてカウントできます。経営のみで指導に関わらない場合は含まれません。
Q. 短期のアルバイト講師も人数に入りますか?
A. 実態として指導を行っていれば含めることが可能です。ただし、登録しているだけで稼働していない講師などは含めるべきではありません。
Q. 事務スタッフは人数に入りますか?
A. 原則として入りません。「技芸又は知識の教授を行う者」という要件があるため、指導に携わらない純粋な事務スタッフはカウント対象外です。
次に取るべき行動
まずは、自社のスタッフリストで「実際にこどもへの指導を行っている人」が何人いるかを確認しましょう。雇用形態に関わらず、指導に関わるメンバーを正確に数えることがスタートです。
4回に渡り、民間教育保育等事業者が認定を受けるための4要件を解説してきました。
この4要件をクリアできて初めて、認定を受けるかどうかの判断が必要となります。
次は認定を受けることによりメリットとデメリットについて解説していきます。


本記事で解説した内容は、現行の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(法令)、およびこども家庭庁が公表している情報(2025年12月上旬時点)に基づき構成しています。
現時点で明確になっている骨格情報に基づき解説していますが、制度の詳細、具体的な申請手順、情報管理措置の細目、および雇用管理上の詳細な留意点等については、今後策定される予定の内閣府令等の下位法令やガイドライン、そして年明けから本格化する全国説明会などの周知資料において明確化されることになります。
最新かつ詳細な情報については、必ずこども家庭庁のウェブサイトや今後公表される正式なガイドライン等をご確認ください
