これまで、制度の仕組みやメリット・デメリットについてお話ししてきましたが、事業者様から一番多くいただく質問は、実はとてもシンプルなものです。
「で、結局うちは対象なの?」
「学習塾」や「スポーツクラブ」といった大きな括りだけ見ていると、「個人のピアノ教室はどうなんだろう?」「プログラミング教室は?」と迷ってしまうこともあるでしょう。
今回は、国の資料で具体的に名前が挙がっている「民間教育保育等事業者(認定対象事業者)」をリストアップしました 。「まさかうちの業界が含まれているとは思わなかった」というケースももしかしたらあるかもしれません。ぜひ、自社の事業が当てはまるかチェックしてみてください。
この記事で分かること
- 「認定対象」になる具体的な業種一覧
- ピアノ、ダンス、書道、プログラミングなどの習い事の扱い
- 「教育」だけでなく「預かり」や「芸能指導」も対象になる点
結論
単に勉強を教えるだけでなく、技芸(スポーツ、文化芸術等)や知識の教授を行う事業であれば、幅広く対象に含まれます 。
対象リスト
以下のリストにある事業者は、認定要件(3人以上の体制など)を満たせば、国の認定を受けて日本版DBSを利用できる「認定対象事業者」となります 。ジャンル別に、具体的な名称を見ていきましょう。
① 教育・学習・知育系
まずはイメージしやすい学習支援の分野です。
- 学習塾
- 家庭教師(派遣事業者が委託契約を結ぶ場合など)
- そろばん教室
- 外国語会話教室(英会話スクールなど)
- 幼児教室
- 知育教室
- 教育支援センター
② スポーツ・運動・ダンス系
身体を動かす習い事も広く対象です。
- スポーツクラブ
- スイミングクラブ
- ダンススクール・ダンス教室
- バレエ教室
- 地域スポーツクラブ・クラブチーム
- フィットネスクラブ
③ 文化・芸術・教養系
座って行う習い事や、芸術分野も明記されています。
- 音楽教室(ピアノ、バイオリンなど)
- 書道教室
- 絵画教室(アートスクール)
- 生花・茶道教室
- 囲碁・将棋教室
- プログラミング教室
- 科学教室(サイエンススクール)
- 演劇教室
④ その他(野外活動・芸能・居場所)
「教室」という形式でなくても、こどもと接する活動は対象になります。
- 芸能事務所(ダンス指導や芸能指導を行う場合)
- ボーイスカウト、ガールスカウト
- 子ども会
- 民間学童保育
- こども食堂(学習支援等を行う場合)
- 自然体験活動事業(キャンプ等)
- 図書館・公民館(で実施される事業)
⑤ 保育・預かりサービス(認可外等)
認可保育所等は「義務」ですが、それ以外の預かりサービスは「認定」の対象です。
- 認可外保育施設
- ベビーシッターマッチングサイト
- 病児保育事業
- 一時預かり事業
- 企業主導型保育施設
- 放課後児童クラブ
⑥ 学校・スクール(学校教育法以外)
学校教育法第1条に定められた、いわゆる「一条校(小中高)」以外のスクールもこちらに含まれます 。
- インターナショナルスクール
- 外国人学校
- 専修学校・各種学校
- フリースクール等(民間の教育施設として)
行政書士の視点
リストを見て、「名称がないから大丈夫」と思った方もいるかもしれませんが、注意が必要です。
このリストはあくまで例示であり、重要なのは「こどもに対して指導や監督を行っているか」という実態です。 例えば、「〇〇サークル」という名称であっても、実態として月謝を受け取り、継続的に子供にスポーツや音楽を教えているのであれば、対象になる可能性が高いです。
また、意外なところでは「芸能事務所」や「ベビーシッターのマッチング事業者」も名前が挙がっています 。「教育業ではないから」という理屈は通じません。こどもと密接に関わるビジネスであれば、業界を問わず制度の対象として検討されています。
よくある質問
Q. 個人でやっているピアノ教室も対象ですか?
A. 人数要件を満たせば対象です。 音楽教室はリストに含まれています 。ただし、認定を受けるには「教育保育等業務に従事する者が3人以上」などの要件が必要です。先生が1人だけの個人教室は、現時点では対象外となる見込みです(※将来的な変更の可能性はあります)。
Q. スイミングスクールの送迎バス運転手は対象ですか?
A. 直接の指導者ではありませんが、確認が推奨されます。今回のリストは「事業者の種類」を示したものです。スイミングクラブ自体は認定対象です 。その中で誰をチェックするか(対象業務)については、単なる運転業務のみであれば対象外となる可能性がありますが、更衣室の見守りなどを兼務する場合は対象となります。
Q. インターナショナルスクールは義務ではないのですか?
A. 学校教育法上の学校以外は「認定」対象です。学校教育法第1条の「学校」は義務対象ですが、それ以外の各種学校やインターナショナルスクールは、こちらの「認定対象事業者」に分類されています 。義務ではありませんが、保護者の期待値は高いため、取得を強く推奨します。
次に取るべき行動
ご自身の事業がリストに含まれていた場合、あるいは近い業種であった場合、日本版DBSへの対応を検討する必要があるでしょう。
本記事で解説した内容は、現行の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(法令)、およびこども家庭庁が公表している情報(2025年12月上旬時点)に基づき構成しています。
現時点で明確になっている骨格情報に基づき解説していますが、制度の詳細、具体的な申請手順、情報管理措置の細目、および雇用管理上の詳細な留意点等については、今後策定される予定の内閣府令等の下位法令やガイドライン、そして年明けから本格化する全国説明会などの周知資料において明確化されることになります。
最新かつ詳細な情報については、必ずこども家庭庁のウェブサイトや今後公表される正式なガイドライン等をご確認ください
