【ゼロからわかる日本版DBS #07】現職スタッフ全員受講が必須?「研修」はいつまでに何をどう教えればいい?

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前回(第6回)のコラムでは、認定申請の前提条件となる「4つの安全確保措置」のうち、「早期把握」と「相談体制」の具体的な整備方法について解説しました。

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今回は、認定申請の前提条件となる「4つの安全確保措置」のうち、「研修」ついて解説していきます。


「日本版DBSの認定を取るには、研修が必要らしい」
「動画を一本見せれば終わりでしょ?」

もしそう思われているなら、少し注意が必要です。
日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定要件となっている「研修」は、単なる知識のインプットだけでは不十分です。法律の施行規則において、「座学」と「演習」を組み合わせることが明確に義務付けられているからです。

今回は、認定取得の必須条件となる「スタッフ研修」について、誰に、いつ、何を、どのように教えればよいのか、国のガイドライン(法的義務)と横断指針(実務的な参考)を整理して解説します。

目次

誰が?研修を受ける必要があるか

まず、誰がいつ研修を受ける必要があるのか、基本的なルールを押さえましょう。

法律では、認定事業者が研修を受講させるべき対象は「教育保育等従事者」とされています。 これは正社員やフルタイムの講師だけではありません。
要件(支配性・継続性・閉鎖性)を満たす業務に従事するスタッフであれば、パート、アルバイト、ボランティア、インターン生であっても対象となります。

  • 学習塾の非常勤講師
  • スイミングスクールのアルバイトコーチ
  • 放課後児童クラブの補助員
  • キャンプのボランティアスタッフ

「アルバイトだから研修は簡易でいい」という特例はありません。
こどもと直接関わる以上、リスクは同じだからです。

いつ?どんな?研修を受ける必要があるか

研修実施時期

研修は、そのスタッフを「業務に従事させる前」に実施しなければなりません。

つまり、採用が決まったら、現場に出る前に必ず研修の時間を設ける必要があります。

すでに働いているスタッフ(現職)についても、認定を受ける時点(または認定後速やかに)で研修を受講している必要があります

認定基準となるガイドラインでは、研修に盛り込むべき内容として以下の8項目が定められています。さらに重要なのは、これらを「座学と演習を組み合わせて行うこと」が義務付けられている点です。

  • 基礎的事項:なぜ性暴力が起きるのか(要因)、こどもの権利について
  • 範囲:何が「性暴力」で、何が「不適切な行為」に当たるか
  • 早期把握:様子の変化にどう気づくか(日常観察など)
  • 相談・報告:相談されたらどう動くか、報告ルートの確認
  • 保護・支援:被害を受けたこどもへの接し方
  • 犯罪事実確認:犯歴確認の手続きにおいてスタッフに求められること
  • 防止措置:万が一の際、配置転換などが行われることの理解
  • 情報管理:情報の厳格な管理(漏洩防止)の必要性

これらは「知らなかった」では済まされない、こどもを守るための基礎知識です。

研修形式

多くの事業者が悩むのが「演習」です。 ガイドラインでは、単に講義を聞くだけでなく、「自分ごととして考え、実際に行動できるようにする」ために、以下のような形式を取り入れることを求めています。

  • グループディスカッション
  • ロールプレイング
  • ケーススタディ(事例検討)

一方的に動画を視聴させるだけでは「演習」とはみなされません。視聴後に「自分ならどうするか」を記述させたり、スタッフ同士で議論したりする時間をセットにする必要があります。

では、具体的にどんなテーマで演習を行えばよいのでしょうか。 ここで参考になるのが、こども家庭庁の「横断指針(ガイドライン)」です。ここには、現場で起こりうる具体的なケーススタディの例が掲載されています。

【ケース①】
「同僚のコーチが、休憩中に小学生の女子児童を膝に乗せて談笑していた。児童も嫌がっている様子はない。あなたならどうする?」

【演習ポイント①】
「嫌がっていないからOK」ではなく、第三者から見て誤解を招く行為であること、エスカレートするリスクがあること(グルーミングの可能性)を議論します。横断指針にある「不適切な行為」の具体例と照らし合わせるのが有効です。

【ケース②】
「生徒から『先生にだけ話すんだけど、実は…』と性被害の相談を受けた。『絶対誰にも言わないで』と頼まれた。どう答える?」

【演習ポイント②】
「約束するよ」と言ってしまうと、後で通報義務が生じた際にこどもを裏切ることになります。 「あなたの安全が一番大事だから、秘密にはできないけど、守れる人と一緒に考えるよ」といった伝え方をロールプレイングで練習します。

「これらをすべて自前で準備するのは大変だ」と感じる方も多いでしょう。
国もその負担を考慮し、標準的な内容を網羅した「研修動画(標準研修・要点研修)」や教材を作成・提供する予定です。

  • 標準研修:正社員や長期雇用のスタッフ向け(フルバージョン)
  • 要点研修:短期アルバイトやボランティア向け(ポイントを絞ったもの)

事業者は、この動画をスタッフに視聴させ、その後に自社のルール(報告連絡先や不適切行為の基準など)を確認する時間や、ケーススタディを行うことで、認定要件をクリアすることができる可能性があります(今後の取扱いによる)。

まとめ

今回のポイントをまとめます。

  • 研修はアルバイトを含む全スタッフに対し、当該業務への着任前に行うのが原則。
  • 「座学」+「演習」の組み合わせが必須条件。動画視聴だけでは足りない。
  • 演習テーマに困ったら「横断指針」の事例を活用する。
  • 国の「標準研修動画」を活用すれば、準備の負担は大幅に減らせる。

適切な研修を行うことは、こどもを守るだけでなく、「知らなかった」ことで加害者になってしまうリスクや、誤解によるトラブルからスタッフ自身を守ることにもつながります。

次回は、いざという時の対応を決める「児童対象性暴力等対処規程」の作成について解説します。 「何を書けばいいの?」「ひな形はある?」といった疑問にお答えします。

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