【ゼロからわかる日本版DBS #17】「犯歴あり」の通知が届いたらどうする?配置転換・内定取消の法的ルール

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前回(第16回)は、新規採用時の確認フローについて解説しました。

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今回は、認定事業者として最も対応に苦慮する場面、つまり「犯罪事実確認の結果、犯歴あり(特定性犯罪事実該当者)という通知が届いた場合」の対応について解説します。

「性犯罪歴があるなら、クビ(解雇)でいいんですよね?」
「内定を取り消したら、訴えられたりしませんか?」

こども性暴力防止法では、「犯歴がある=即解雇」とは定めていません。この点については、労働関係法令などの観点から、慎重なステップを踏むことが求められています。今回は、犯歴情報の通知の仕組みと、法が求める「防止措置(配置転換等)」の具体的内容について、ガイドラインに基づき解説します。

目次

いきなり教室に通知は来ない?「本人通知」の仕組み

まず知っておくべきは、システムから「犯歴あり」の通知がいきなり事業者に届くわけではない、という点です。誤情報の登録などを防ぐため、以下のプロセスを経ることになります。

  1. 国から本人へ通知
    まず、こども家庭庁から申請したスタッフ本人に対して、「あなたに関する特定性犯罪事実(前科)の記録が見つかりました」という通知がシステム上で行われます。
  2. 訂正請求期間(2週間)
    本人は、その内容が事実と異なる場合、通知から2週間以内に国に対して訂正を請求することができます。
  3. 事業者への通知
    2週間が経過しても訂正請求がない場合、または本人が結果を認めた場合に初めて、事業者に「犯歴あり」の確認書が発行されます。

【重要】この期間に「辞退」があれば、事業者は知ることができない

もし、本人が「事業者に知られたくない」と考え、この期間中に内定辞退や申請の取下げを行った場合、手続きはそこでストップします。

この場合、事業者には「犯歴あり」という結果は通知されず、単に「申請が取り下げられました」という結果だけが残ります。事業者は深掘りせず、採用を見送ることになります。

「犯歴あり」=「おそれあり」。必ず講じるべき防止措置

さて、正式に「犯歴あり(特定性犯罪事実該当者)」の確認書が届いた場合、事業者はどうすべきでしょうか。法律では、犯歴がある者は再犯のリスクが高いため、「児童対象性暴力等が行われるおそれがある」と自動的にみなされます。

その上で、事業者は以下の「防止措置」を講じる義務を負います。

原則として、当該従事者を児童等と接する業務(対象業務)に従事させないこと

つまり、「監視付きならOK」や「本人が反省しているからOK」という甘い判断は許されず、こどもと接する業務からは外さなければなりません。

「内定者」と「現職者」で対応は異なる

ここからは、対象が「これから入る人(内定者)」か「すでにいる人(現職者)」かによって、対応の難易度が大きく変わります。

ケースA:新規採用(内定者)の場合

第16回で解説した通り、事前に「性犯罪歴がないこと」を採用条件とし、誓約書等で確認を行っていた場合、犯歴の発覚は「重要な経歴の詐称」にあたります。この場合、合理的な理由があるとして、「内定取消し」を行うことが一般的に可能です。

内定通知書や募集要項に記載した「取消事由」に基づき、粛々と内定を取り消します。

ケースB:既存スタッフ(現職者)の場合

難しいのはこちらです。すでに雇用契約があるスタッフの場合、簡単に「解雇」することは労働関係法令上、非常にリスクが高い行為と位置付けられています。ガイドラインでは、以下の順序で検討することが求められています。

  1. 配置転換(異動)
    まず、こどもと接しない部署(事務、清掃、教材作成、大人向け教室など)への異動を検討します。
  2. 業務範囲の変更
    異動先がない場合でも、現在の業務から「こどもとの接触」を物理的に断つ方法がないか検討します。
  3. 解雇・退職勧奨
    配置転換等の措置を十分に検討したが、事業所の規模や業務内容からして「解雇以外の選択肢がない」という事情がある場合に限り、解雇が認められる可能性があります。

※もし、入社時の誓約書で嘘をついていたことが発覚した場合は、就業規則に基づく「懲戒解雇」の対象になり得ますが、これも就業規則の整備状況によります。

犯歴だけじゃない!「不適切な行為」への対応

日本版DBSの防止措置は、前科がある人だけが対象ではありません。

社内の調査などで、「前科はないが、不適切な行為(わいせつの一歩手前など)を行っていた」と認定された場合も、防止措置の対象になります。

  • 重大な不適切な行為
    執拗なつきまといや、意に反する身体接触など。これは犯歴ありの場合と同様、「原則として業務から外す」対応が求められます。
  • 軽微な不適切な行為
    初回であれば、指導や研修を行い、経過観察とすることもあり得ますが、繰り返す場合は業務から外す必要があります。

まとめ:就業規則と専門家連携が命綱

「犯歴あり」の通知が来たその瞬間に、慌ててルールを作っても手遅れです。認定申請前の今のうちに、以下の準備を整えておくことが、教室とこどもを守るための防波堤になります。

  1. 就業規則の整備
    「性犯罪歴がある場合は配置転換を行う」「経歴詐称は懲戒対象とする」旨を明記する。
  2. 業務の棚卸し
    「こどもと接しない業務」が自社にあるか確認しておく。
  3. 専門家との連携
    実際に「クロ」が出た場合、自己判断で解雇せず、必ず社労士や弁護士に相談できる体制を作っておく。

次回は、どうしても確認完了を待てない緊急事態(急な欠員など)に使える特例措置、「いとま特例」について解説します。「明日から先生が足りない!」というピンチをどう乗り切るか、その厳しい条件とルールをお話しします。

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