【不都合な真実#02】「犯歴あり」でも即クビにはできない?日本の労働法が突きつける残酷な現実

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「こどもを守るための法律なのだから、性犯罪歴がある人は問答無用で排除できるはずだ」

多くの経営者や施設長がそう考えています。心情的には痛いほど分かります。
しかし、日本の法律、特に「労働契約法」や「労働基準法」の世界では、その理屈は通用しないのが現実なのです。

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、性犯罪歴のある人を「こどもに接する業務に就かせてはならない」と定めていますが、「雇用してはならない(クビにしろ)」とは言っていません。

この「業務の禁止」と「雇用の禁止」のギャップこそが、事業者を苦しめる一番のポイントと言っても過言ではありません。

今回は、犯歴が発覚した際に直面する「解雇のハードル」と、そのリスクを回避するための「事前準備」について徹底解説していきます。

目次

衝撃の事実:「犯歴発覚=即懲戒解雇」は認められない?

まず、日本版DBSの制度設計における「犯歴あり(特定性犯罪事実該当者)」への対応ルールを確認しましょう。 国が策定したガイドラインには、以下のように明記されています。

犯罪事実確認の結果、従事者に特定性犯罪前科があることが確認された場合などは、防止措置として、従事者の配置転換や業務範囲の限定、内定取消しや試用期間中の解約、普通解雇、懲戒処分など雇用管理上の措置が必要です。

さらっと書いてありますが、ここには恐ろしい優先順位が存在します。
法律が求めているのは、あくまで「こどもと接しない業務への配置転換」が第一選択であり、「解雇」は他にどうしようもない場合の ”最終手段” だという点です

なぜ「即クビ」にできないのか?

日本の労働法では、解雇(特に懲戒解雇)は「死刑判決」にも等しい極めて重い処分とされています。 過去に性犯罪の前科があったとしても、それが「現在の業務」や「企業秩序」に直接的な悪影響を及ぼしていない場合、あるいは採用時に嘘をついていなかった場合、過去の罪だけを理由に解雇することは「解雇権の濫用(労働契約法第16条)」と判断されるリスクが高いのです。

法律が求める「配置転換」という無理難題

では、具体的にどう対応すればよいのでしょうか。

ガイドラインでは、犯歴が確認された場合、まずは「配置転換(異動)」や「業務範囲の見直し」を検討しなければならないとされています。

「こどもと接しない業務」とは?

  • 配置転換
    営業職、総務・経理、教材開発、清掃業務、倉庫管理など、物理的にこどもと接触しない部署への異動。
  • 業務範囲の変更
    例えば保育士の場合、こどもの保育からは外し、事務室での書類作成や壁面装飾の製作のみに専念させる。
  • 在宅勤務
    こどもと接触する機会がないテレワークへの切り替え。

小規模事業者の悲鳴

ここで大きな問題が生じます。

大手企業であればバックオフィス部門への異動も可能かもしれません。
しかし、小さな学習塾、ピアノ教室、認可外保育施設などにそんな「逃げ場」があるでしょうか?

「うちは全員が現場に出る指導員です。事務専任のポストなんてありません」
「ワンルームの教室で、物理的に隔離なんて不可能です」

こうした小規模事業者であっても、法律は容赦なく「配置転換等の措置を講じることを十分に検討した」というプロセスを求めます。

いきなり解雇通知を出すのではなく、「事務職を作れないか検討した」「清掃業務への転換を打診した」といった事実を積み上げ、それでもなお「雇用を維持することが客観的に不可能である」と証明できた段階で初めて、解雇(普通解雇)の有効性が認められる可能性が出てくるのです。

「解雇」を有効にするための唯一の切り札

「犯歴がある人を雇い続けることなんてできるわけない」
「そんな人と一緒には働けない」
「配置転換できたとしても、保護者に何て説明したらいいか…」

現実的な話として、このような状況になれば、上記のように感情的になるのも致し方ないと私は思っています。

唯一、法的に有利な立場で戦うために必要なもの。それが「採用時の入口対策」です。
「重要な経歴の詐称(経歴詐称)」を理由とした処分です。

ただし、この「切り札」が使えるのは、あくまで「これから採用する者(内定者・求職者)」に限られます。既に雇用契約を結んでいる「現職者」に対して、後出しでこの手法を適用することは原則としてできません。

ロジックの組み立て方

  • 採用時に「性犯罪前科がないこと」を採用の必須条件として明示する。
  • 内定者に「性犯罪前科はありません」という誓約書を書かせる。
  • もし犯罪事実確認により「前科あり」となれば、「あなたは採用条件を満たしていない」かつ「嘘をついて入社した(経歴詐称)」として処分する。

このロジックを確立できていれば、単に「過去に罪を犯したから」ではなく、「会社を騙して入社し、信頼関係を破壊したから」という理由で、内定取消や解雇(場合によっては懲戒解雇)が認められる可能性が格段に高まります。

今すぐ準備すべき「3つの防衛策」

2026年12月の施行を待っていてはいけません。
それは、今から採用するスタッフが、将来のDBSチェックの対象になるからです。
以下の3点セットを、次回の採用から必ず導入してください。

【実務のポイント】誓約書は「内定者」から取る

よくある間違いが、「現職のスタッフ」から無理やり誓約書を取ろうとすることです。
誓約書による確認は、「これから雇う人(内定者・求職者)」に対して行うものです。

既に雇用契約を結んでいる現職スタッフに対しては、後から「犯歴がないことを誓約しろ」と迫ることはできません。

「法改正によりDBSチェックが義務化されること」「犯歴があれば現場に出られなくなること」を周知・説明し、就業規則を変更することが正しい手順です。

まとめ:DBSは「人事戦略」そのもの

日本版DBSの導入は、単なる事務手続きの追加ではありません。

「どのような人材を求めるか」「リスクのある人材をどう排除するか」という、企業の人事防衛戦略そのものです。

犯歴照会システムが稼働した際、画面に「あり」と表示された時、あなたの手元に「採用時の誓約書」があるかないか。

それが、あなたの事業と、こどもたちを守れるかどうかの分水嶺になります

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