【不都合な真実#03】認定マークが「免罪符」になる日。事件が起きた時、経営者は守られるのか?

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認定事業者マーク(こまもろうマーク)を取得すれば、保護者は安心し、経営上のリスクヘッジになる。

多くの経営者がそう考えて、日本版DBS(こども性暴力防止法)への対応準備を進めています。その考え自体は、決して間違いではありません。

しかし、現実には「認定事業者マークさえ取れば万全」というわけではありません。

認定事業者マークを取得しても、性犯罪がゼロになるわけではありません。 そして、万が一事件が起きた時、マークそのものがあなたを守ってくれるわけでもありません。

むしろ、国の認定を受けた認定事業者であるからこそ、事件が起きた際の世間の目はより厳しくなります。対応を誤れば「看板に偽りあり」として、即座に社会的信用を失うリスクすら孕んでいるのです。

今回は、認定事業者マーク(通称:こまもろうマーク)の本当の意味と、事件発生時に経営者が問われる責任の所在について、最新のガイドラインに基づき徹底解説します。

目次

「認定」の正体:国が与えるのは「お墨付き」か「重荷」か

まず、日本版DBSにおける認定とは法的に何を意味するのかを整理しましょう。

法律上、認定とは「学校設置者等が講ずべき措置と同等の措置を実施する体制が確保されている」と国(こども家庭庁)が認めるものです。

つまり、認定を受けるということは、「公立学校と同じレベルの厳しい安全管理体制を、自社で維持・運用します」と宣言し、その継続的な責任を負うことを意味します。単に「犯歴チェックシステム(日本版DBS)を使う権利を得る」だけではないのです。

認定事業者に課される4つの重い義務

①犯罪事実確認
(法第26条)
対象業務に従事する者の性犯罪前科を確認すること
②安全確保措置
(法第20条)
面談やアンケート、相談窓口の設置など、被害を早期把握する体制の整備
③防止措置
(法第20条)
前科がある者や疑いがある者をこどもに接する業務から外す等の適切な対応
④情報管理措置
(法第27条)
取得した犯歴情報を厳重に管理し、漏えいを防ぐこと

認定を受けると、以下の義務が法的に課されます。
これらは努力目標ではなく、違反すれば認定取消しや罰則の対象となる法的義務です。

    認定事業者マークを掲げるということは、これらの重い義務を背負い続けることと同義です。とりあえずマークだけ欲しいという軽い気持ちで申請すると、その運用コストと法的責任の重さに押し潰されることになります。

    事件発生!その時「認定マーク」は盾になるのか?

    では、万が一、認定事業者のスタッフがこどもに対して性暴力や不適切な行為を行ってしまった場合、どうなるのでしょうか。

    「うちは国の認定を受けて、ちゃんとDBSチェックもしていた。だから会社に責任はない。」

    経営者はそう主張したいところでしょう。しかし、法的な現実はそう甘くありません。

    民事上の責任(使用者責任・安全配慮義務違反)

    まず、被害者(こども・保護者)に対する損害賠償責任です。DBSチェックで「犯歴なし」と出たスタッフが事件を起こした場合でも、会社側の使用者責任(民法第715条)や、契約上の安全配慮義務違反が免除されるわけではありません。

    裁判になれば、以下のような点が厳しく追及されます。

    • DBSチェックの結果だけで安心して、日頃の行動観察(日常観察)を怠っていなかったか?
    • 密室で二人きりにならないというルール(防止措置)は、現場で徹底されていたか?
    • こどもからのSOSや相談を、組織として無視していなかったか?

    認定事業者であることは、高度な安全管理を行っていると自ら標榜していることになります。そのため、一般的な事業者よりも予見可能性や回避義務のハードルが高く設定される可能性すらあります。認定事業者なのに、なぜ防げなかったのかと、その体制の不備を問われることが想定されます。

    行政上の責任(認定取消しと公表)

    さらに深刻なのが、行政処分としての社会的制裁です。ガイドラインでは、認定事業者が適切な措置を講じていなかった場合、認定の取消しが行われると規定されています(法第32条)。

    そしてここが重要ですが、認定が取り消された場合、事業者名や違反の内容がインターネット等で公表されます。これは事実上の「市場からの追放勧告」に等しいインパクトを持ちます。

    それでもなお「認定」を取得すべき最大の理由

    ここまでリスクを強調しましたが、では認定を取らない方がマシなのでしょうか?
    答えは、明確に「No」です。

    こどもに関わるビジネスを行う以上、これからの時代、認定を取得しないリスクの方がはるかに大きくなります。

    「選ばれない」リスク(市場からの退場)

    今回、認定事業者と学校設置者等には、シンボルマークとして「こまもろうマーク」(フクロウのモチーフ)が策定されました。今後、保護者が習い事や施設を選ぶ際、このマークがあるかどうかが、最初のスクリーニング基準になります。

    「隣のピアノ教室にはフクロウのマークがあるのに、なぜこちらの教室にはないのですか?」

    この問いに明確な根拠を持って答えられなければ、生徒募集において圧倒的な劣勢に立たされます。認定を取らないことは、市場競争からの撤退を意味しかねないのです。

    重大事故時の「注意義務違反」のリスク

    もし認定制度を利用せずに、所属スタッフによる事故が発生してしまった場合、法的には極めて厳しい状況に立たされます。

    被害者側の訴訟対策として、以下のような論理が展開される可能性が高いからです。

    「国が用意した安価で確実な確認システム(DBS)が存在したにもかかわらず、あえてそれを利用しなかったことは、安全配慮義務の明白な怠慢である」

    認定制度の普及が進むにつれ、DBSチェックの実施は、業界における最低限の注意義務へと変わっていきます。公的な安全確認手段を講じずに事故を起こした際、経営者が負うべき賠償責任や社会的指弾は、対策を講じていた場合とは比較にならないほど甚大になるでしょう。

    つまり、認定取得は免罪符ではありませんが、万が一の際に経営者が「なすべき対策は尽くしていた」と主張するための、防衛上の法的武器となるのです。

    経営者が今やるべき「こまもろう」への第一歩

    2026年12月の施行に向け、経営者が今すぐ着手すべきは、単なる申請書類の準備ではありません。認定に耐えうる組織作りです。

    認定基準となる「5つの柱」の整備

    施行ガイドラインでは、認定を受けるための基準として以下の整備を求めています。

    1. 体制の整備: 責任者を決め、業務を計画的に管理する。
    2. 早期把握: こどもへのアンケートや面談を定期的に行う。
    3. 対処規程: 何が不適切な行為かを定義し、発覚時の対応手順を決める。
    4. 研修: スタッフに対し、座学だけでなく演習(ロールプレイング)を含めた研修を行う。
    5. 情報管理: 犯歴データの漏えいを防ぐための物理的・技術的対策を行う。

    特に「研修」における演習の必須化は、従来の座学のみの研修では認められないため、多くの事業者が見落としがちなポイントです。

    まとめ:マークは「ゴール」ではなく「誓い」

    こまもろうマークは、取得して終わりではありません。 「私たちは、こどもたちの安全を最優先に考え、面倒な手続きや厳しいルールも厭わずに実行します」という、社会に対する誓い(コミットメント)の証です。

    事件が起きた時、経営者を守るのはマークそのものではなく、そのマークに恥じないよう日頃から積み重ねてきた記録と行動だけです

    「いつ誰に、どのような演習を含む研修をしたか」
    「いつ誰の犯歴を確認したか」
    「不適切な兆候があった時、組織としてどう動いたか」

    これらの記録が一つ一つ積み上がって初めて、万が一の時に「私たちは最善を尽くしました」と胸を張って言えるのです。

    当事務所では、単なる認定申請サポートにとどまらず、この「記録と行動」が自然に残る組織体制の構築(児童対象性暴力等防止規程の作成など)を全面的に支援いたします。

    また、就業規則の変更が必要な場合には、提携する社会保険労務士と連携し、コンプライアンスを遵守した万全のサポートを提供いたします。

    こどもたちの未来を守るために、今できることから始めましょう。

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