【ベビーシッター・家庭教師】日本版DBSの認定は取れない? 「場所要件」の壁と代替的な安全対策を徹底解説

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「こどもと密室で1対1になる仕事こそ、性犯罪歴の確認が必要なのではないか?」

2026年12月の「日本版DBS(こども性暴力防止法)」施行に向け、ニュースを見た多くの保護者様、そしてベビーシッターや家庭教師事業者の皆様は、そう感じているはずです。
しかし、現在国が進めている制度設計において、これら「訪問型サービス」は、日本版DBSの認定を受けられない(対象外となる)可能性が極めて高いと考えられます。

「性犯罪を許さない」という想いは同じはずなのに、なぜ制度の対象外なのか。
今回は、行政書士の視点から、「場所要件」という高い壁と、認定が取れない事業者が生き残るための「代替的な生存戦略」について、法律のロジックを解き明かしながら解説します。

※本記事は2025年11月21日時点の情報に基づいています。

目次

結論:訪問型サービスは「認定対象外」となる公算大

まずは結論から申し上げます。
こども家庭庁などで議論されている認定要件(民間教育保育等事業者)において、以下の要件が存在するため、訪問型サービスは認定を受けることが困難です。

事業を行う場所が、事業者が管理する施設であること。

つまり、

  • OK: 学習塾の教室、スイミングスクールのプール、ダンススタジオ
    • → 事業者が鍵を管理し、誰が出入りするかコントロールできる場所。
  • NG: 児童の自宅、近所の公園、依頼者の指定場所
    • → 事業者の管理権が及ばない、プライベートな場所。

ベビーシッターや家庭教師は、原則として「児童の居宅(自宅)」に訪問してサービスを提供します。
この「場所」がネックとなり、日本版DBSの認定申請することができない可能性が高いのです。

なぜ「自宅」だとダメなのか? ~国のロジックを読み解く~

「場所なんてどこでもいいじゃないか。重要なのは『人(スタッフ)』の犯歴チェックだろう?」

そう思われるかもしれません。しかし、日本版DBSという制度は、単なる「犯歴照会システム」ではありません。
国が認定を与える条件として、犯歴確認とセットで義務付けているのが、厳格な「安全確保措置」です。
これには以下のような具体的なアクションが含まれます。

  1. 死角の解消: パーテーションを外す、見通しを良くする。
  2. 密室の回避: 常に複数の大人の目がある状態にする。
  3. 巡回・監視: 管理者が定期的に見回りをする、防犯カメラを設置・録画する。

「自宅」では安全確保措置が実施できない

ここで問題が発生します。
生徒(顧客)の自宅というプライベート空間において、事業者がこれらを強制できるでしょうか?

  • 防犯カメラ: 他人の家のリビングに、事業者が勝手に監視カメラを設置することはできません。プライバシー権や住居権の侵害になります。
  • 管理者の巡回: シッティング中に、管理者が「ちゃんとやってるか?」と他人の家に上がり込んで巡回することも現実的ではありません。
  • リフォーム: 死角をなくすために、顧客の家の壁を取り払うことなど不可能です。

国としては、「犯歴がないことを確認しました」というだけでは不十分で、「万が一魔が差したとしても、犯行に及べない環境(監視体制)」がセットでなければ、お墨付き(認定)は出せないのです。
「環境をコントロールできない場所での事業には、責任を持てない」というのが、法の冷徹なロジックです。

ケーススタディ:この場合はどうなる?

具体的な事業形態ごとに、認定の可否(見込み)を整理してみましょう。

ケース①:派遣型の家庭教師・ベビーシッター

  • 事業形態: 会社がスタッフを雇用し、顧客の自宅へ派遣する。
  • 判定: × 対象外
  • 理由: 指導場所が「自宅」であるため。雇用関係があっても場所要件を満たしません。

ケース②:マッチングサイト登録の個人シッター

  • 事業形態: 個人事業主として登録し、顧客と直接契約。
  • 判定: × 対象外
  • 理由: 場所要件に加え、「人数要件(指導者3人以上)」も満たさないため、二重の意味で対象外です。

ケース③:自宅開業のピアノ教室(生徒が通ってくる)

  • 事業形態: 先生の自宅の一室を教室として使用。
  • 判定: △ 条件付きで可能性あり
  • 理由: 場所は「事業者が管理する施設(先生の自宅)」なのでOK。ただし、先生1人で運営している場合は「人数要件(3人以上)」でNGとなります。スタッフを雇っていれば対象になる可能性があります。

ケース④:店舗型と派遣型のハイブリッド

  • 事業形態: 駅前に「教室」を持ちつつ、希望者には「訪問指導」も行う塾。
  • 判定: △ 教室部門のみ対象
  • 理由: 「教室で行う事業」については認定を受けられる可能性がありますが、「訪問指導」のスタッフまでカバーできるかは、今後のガイドライン次第です。

「認定なし」でも選ばれるための3つの戦略

「認定が取れないなら、うちは危険だと思われて廃業するしかないのか…」

決してそうではありません。 制度の対象外だからこそ、「認定マーク以外の方法」で信頼を勝ち取る戦略が必要です。

行政書士として、以下の3つの対策を提案します。

戦略1:「対象外である理由」を誠実に明記する

最もよくないのは、曖昧にすることです。
ウェブサイトや重要事項説明書に、以下の文言をはっきりと記載しましょう。

「当サービスは、法令が定める実施場所の要件(児童の居宅等)により、日本版DBS認定制度の対象外となっております。そのため認定マークはありませんが、独自の厳格な安全基準を設けています。」 これにより、「隠しているわけではない」という誠実さが伝わります。

戦略2:民間レベルの「バックグラウンドチェック」導入

国(法務省)のデータベースにはアクセスできませんが、民間の調査会社を使って、以下の情報を確認することは可能です(もちろん本人の同意が必要)。

  • 新聞・Web記事などのメディア掲載歴(過去の逮捕報道など)
  • 破産歴やSNSでの不適切な投稿歴 「当社では、採用時に第三者機関による厳格なリファレンスチェックを実施しています」とアピールすることで、認定に近い安心感を演出できます。

戦略3:テクノロジーによる「可視化」

物理的な監視ができない分、デジタル技術で補完します。

  • 見守りカメラの推奨: 「保護者様によるカメラ設置を歓迎します」と規約に明記する。
  • GPS・録音: シッターにGPS携帯や、サービス中の音声録音(業務記録用)を義務付け、ブラックボックス化を防ぐ。
  • レポートの即時性: 終了後、詳細なレポートをアプリで即時送信する仕組みを整える。

よくあるご質問(Q&A)

Q. 将来的に、ベビーシッターも対象になる可能性はありますか?
A. 有識者会議でも「リスクが高い」とは認識されており、議論は続いています。法施行後(2026年以降)の「見直し(3年後目途)」のタイミングで、GPS常時携帯などを条件に対象に含まれる可能性はゼロではありません。動向を注視する必要があります。

Q. 個人でシッターをしていますが、警察で「無犯罪証明書」をもらって提示するのはダメですか?
A. 現在の日本の制度では、一般的な就職や営業活動のために警察が「無犯罪証明書」を発行することは、原則として認められていません(海外渡航などの特別な理由が必要)。したがって、独自に公的な証明書を入手することは困難です。

まとめ:制度に頼れないからこそ、自社の「覚悟」が試される

  • 訪問型サービスは、「場所の管理」ができないため認定対象外となる見込み。
  • 「対象外=危険」ではない。理由を説明し、代替策を示すことが重要。
  • 民間のチェックやテクノロジー活用で、独自の「安全ブランド」を確立する。

認定マークという「国の認証」を持てないベビーシッター・家庭教師業界こそ、実質的な安全対策の質が問われます。 当事務所では、認定対象外となる事業者様向けに、「保護者への説明文書(法的根拠の解説)」の作成などの策定支援を行っております。

「制度の枠外」でどう戦うか。その戦略づくりを、ぜひ一緒に考えさせてください。

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