この記事で分かること
日本版DBSについて、最も多く寄せられる相談が「自分の教室は対象になるのか」という点です。 学校や保育所は対象だとわかりますが、学習塾、英会話スクール、スポーツクラブ、放課後デイサービスなど、こどもと関わる事業は多岐にわたります。
この記事では、事業者の区分(義務か認定か)と、小規模事業者が認定を受けるための条件について解説します。
結論
すべての事業者が「義務」ではありません。
日本版DBSの制度は、事業者のタイプによって「義務」と「認定(任意)」に分かれます。
• 義務対象(学校設置者等): 学校、幼稚園、認可保育所、認定こども園、児童養護施設などは、法律で対応が義務付けられています。
• 認定対象(民間教育保育等事業者): 学習塾、スポーツクラブ、スイミングスクール、認可外保育施設などは、国に申請し認定を受けた場合に「認定事業者」となります(任意)。
ただし、「義務じゃないから関係ない」とは言い切れないのが、この制度の難しいところです。
なぜ?
制度側の背景
法律上、公的な性質を持つ「学校」と、民間の「学習塾」では位置づけが異なります。そのため、学校には法律で一律に義務を課すことができますが、民間事業者には「自主的な申請に基づく認定」という形をとっています。しかし、こどもを守る必要性に公私の区別はありません。
現場側の事情
「義務じゃないなら、手間もかかるし導入しなくてもいいのでは」と考える事業者様もいるでしょう。 しかし、保護者の視点はシビアです。「あそこの塾は認定を受けている(=国が認めた安全体制がある)」となれば、認定を受けていない教室は選ばれにくくなる可能性があります。制度上は任意であっても、経営戦略上は対応が迫られるケースが多いと考えられています。
日本版DBSの制度整理
小規模事業者の「3人ルール」
民間事業者が対象となる「認定制度」には、一定の要件があります。 規模が小さいからといって自動的に対象外になるわけではありませんが、「指導者の人数」が重要な基準になります。
個人経営・小規模事業者の注意点
「民間教育事業(学習塾やスポーツ教室等)」が認定を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 期間: 半年以上の継続的なカリキュラムがあること
2. 場所: 事業者が用意した教室等で行うこと(生徒の自宅のみは原則対象外)
3. 人数: 指導を行う者(講師・インストラクター等)が「3人以上」いること
特に注意が必要なのは「人数」です。 この「3人」には、正社員だけでなく、アルバイト、パート、派遣スタッフ、ボランティアも含まれます。 つまり、代表者1名のみで運営している完全な個人塾は対象外ですが、「塾長+アルバイト講師2名」で運営している場合は、計3名となり、認定を受けられる(=制度の対象となる)可能性があります。
認定するために必要となる要件については、次回以降詳しく解説していきます。
現場ではどう対応すべきか
まずは自社の事業形態が、義務対象なのか、認定対象(任意)なのかを確認しましょう。
もし、現在は認定対象外でも、将来的に講師を増やす計画があるなら、近い将来に対象になる可能性があります。「小規模だから関係ない」と早合点せず、実態で判断する必要があります。
行政書士の視点
信頼の証としての「認定マーク」
「認定対象」になり認定を取得することは、ある意味で「国のお墨付き」を得ることと同義になります。認定事業者は広告などに「認定マーク」を表示することができ、今後、保護者が教室選びをする際の重要な判断基準になることは間違いありません。
特に、地域密着型の教室ほど、噂や評判は重要です。「うちは国の認定を受けて、安全管理を徹底しています」と胸を張って言える体制を作ることが、長期的な経営安定につながります。
よくある質問
Q. 小規模事業者でも対応が必要ですか?
A. 「義務対象施設(認可保育所等)」であれば、規模にかかわらず対応が必要です。「民間教育事業(塾等)」の場合は、指導者が3人以上いる等の要件を満たし、認定を受けた場合に対応が必要(認定対象)となります。
Q. 個人経営の学習塾も対象ですか?
A. 1人で行う事業は対象外です。ただし、アルバイト講師等を含めて「教える人」が3人以上いれば、個人事業主であっても認定の対象となり得ます。
Q. 埼玉県内の事業者ですが、どこに申請すればいいですか?
A. 民間事業者の認定申請の窓口は、自治体ではなく「こども家庭庁(国)」になります。本法律は全国一律で適用され、認定権限は内閣総理大臣(こども家庭庁)にあるためです。
次に取るべき行動
民間教育保育等事業者であることが分かった場合、認定を受けるために必要な4要件について確認をしていきましょう。次回以降のコラムで共に学んでいきましょう。
本記事で解説した内容は、現行の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(法令)、およびこども家庭庁が公表している情報(2025年12月上旬時点)に基づき構成しています。
現時点で明確になっている骨格情報に基づき解説していますが、制度の詳細、具体的な申請手順、情報管理措置の細目、および雇用管理上の詳細な留意点等については、今後策定される予定の内閣府令等の下位法令やガイドライン、そして年明けから本格化する全国説明会などの周知資料において明確化されることになります。
最新かつ詳細な情報については、必ずこども家庭庁のウェブサイトや今後公表される正式なガイドライン等をご確認ください
