この記事で分かること
日本版DBSの「認定」を取得したいと考える民間事業者にとって、「6か月以上の修業期間」については前回解説をいたしました。

続いて確認すべきなのが、「対面指導」の有無です。
「うちはオンライン英会話だけど対象?」
「基本は動画視聴だけど、月に1回スクーリングがある場合は?」
「通信添削だけのサービスは?」
この記事では、認定を受けるための要件のうち、指導形態を問う「対面による指導を行うものであること」という基準について、具体的なOK/NGラインを解説します。
結論
民間教育事業(学習塾等)が認定を受けるには、「児童等に対して対面による指導を行うもの」でなければなりません。
したがって、対面での指導が一切想定されていない「完全オンライン」のサービスや通信教育は、原則として認定の対象外となります。
ただし、基本はオンラインであっても、対面指導を行う機会(スクーリングや合宿、面談等)が想定されている場合は、対象になり得ます。
なぜ?
制度側の背景
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、「密室でこどもと二人きりになる」など、性暴力が発生しやすい環境(閉鎖性)がある事業を対象としています。
物理的な接触や空間の共有がない「完全オンライン」の環境では、同法が想定する物理的な閉鎖性や支配性が生じにくい(または録画等で監視可能である)と考えられるため、認定の対象から外されています。
現場側の事情
しかし、近年はオンラインとオフライン(対面)を組み合わせたハイブリッド型の教育サービスが増えています。
「普段はオンラインだが、夏休みだけ教室に来る」「希望者のみ対面面談を行う」といったケースで、自社が制度の対象になるのか判断に迷う事業者が増えています。
日本版DBSの制度整理:対面要件のポイント
国のガイドライン案では、「児童等に対して対面による指導を行うものであること」について、以下のような判断基準が示されています。
1. 完全オンライン・通信教育
- 【対象外】 対面による指導が一切想定されず、オンライン会議システムや動画視聴、郵便などのみで完結する事業。これは認定を受けられません。
2. ハイブリッド型(オンライン+対面)
- 【対象】 基本的にはオンラインであっても、「児童等の要望等に応じて、対面による指導を行うことも想定される事業」であれば、対象になり得ます。
- 例:普段はアプリ学習だが、定期的に教室でのスクーリングがある。
- 例:オンライン家庭教師だが、希望すれば対面授業や対面面談も実施する。
現場ではどう対応すべきか
自社のサービスの中に「対面」の要素が含まれているか、あるいは「対面」のオプションを用意しているかを確認してください。
「完全オンライン」の事業者であっても、もし日本版DBSの認定を強く望むのであれば、カリキュラムの一部に対面指導(合宿、体験学習、教室での指導など)を組み込むことで、要件を満たす可能性があります。
逆に、対面指導を一切行わない事業者は、日本版DBSの認定を受けることはできませんが、それは「法的なリスクが低い(物理的な接触がない)」とみなされているためです。認定マークは取得できませんが、オンライン特有の安全対策(録画の保存、保護者へのURL共有など)をアピールすることで、信頼を獲得していくことになります。
行政書士の視点
この要件は、日本版DBSが「物理的な空間でのこどもの安全」を主眼に置いていることを示しています。
申請時には、対面指導を行っていることを示す資料(ウェブサイトのコピーやパンフレット等)の提出や申告が求められる予定です。
「基本はオンラインだから関係ない」と即断せず、「年に数回でも対面の機会がないか」「規約上、対面対応が可能になっていないか」を確認することをお勧めします。対面の機会が少しでもあるなら、万が一のリスクに備えて認定を取得し、犯歴確認を行う意義は大きいです。
よくある質問
Q. Zoomなどのビデオ通話で1対1になる場合は「対面」ですか?
A. いいえ、画面越しのやり取りのみであれば、本制度で言う「対面」には該当しません。物理的に同じ空間にいることが要件となります。
Q. 年に1回だけ文化祭や発表会で集まります。これは対象ですか?
A. その集まりの中で、指導者から児童への「指導」や「接触」が行われる実態があり、それが事業の一環として組み込まれていれば、対面指導の要素があると判断される可能性があります。
Q. 普段は対面ですが、感染症流行時だけオンラインにしています。
A. 事業の本来の形態として対面指導を行っているのであれば、一時的なオンライン化であっても認定の対象となります。
次に取るべき行動
自社のサービス規約や募集要項を確認し、「対面での指導・面談」がサービス内容に含まれているか、あるいはオプションとして設定されているかをチェックしましょう。
次回は2つ目の要件である「指導場所」について詳しく解説します。

本記事で解説した内容は、現行の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(法令)、およびこども家庭庁が公表している情報(2025年12月上旬時点)に基づき構成しています。
現時点で明確になっている骨格情報に基づき解説していますが、制度の詳細、具体的な申請手順、情報管理措置の細目、および雇用管理上の詳細な留意点等については、今後策定される予定の内閣府令等の下位法令やガイドライン、そして年明けから本格化する全国説明会などの周知資料において明確化されることになります。
最新かつ詳細な情報については、必ずこども家庭庁のウェブサイトや今後公表される正式なガイドライン等をご確認ください
