【ニュース解説】地元密着型塾こそ「日本版DBS」認定が必要な理由とは?わいせつ事件から学ぶ教室の安全対策と経営防衛

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先日報じられた個別指導塾でのわいせつ事件は、多くの保護者や教育関係者に衝撃を与えました。 被告は生徒の家庭からも信頼されていた元教室長
長年の関係性を逆手に取り、生徒の体に何度も触れていたという内容でした。

「信頼していた先生に裏切られた」——これは、決して他人事ではありません。

目次

「密接な関係」が生むリスクと構造

地元密着型ならではの落とし穴

地元密着型の塾や英会話教室では、講師と生徒の距離が近くなることが多く、安心感につながる反面、過度な依存関係や境界線の曖昧化が起こりがちです。 今回の事件でも、「精神的に距離が縮まった」という加害者の独りよがりな思い込みが、わいせつ行為の引き金となりました。

事件は大手だけの問題ではない

「大手塾の話でしょ?」と思うかもしれません。しかし、全国どこにでもある形態の教室で、誰にでも起こり得る構造的リスクだったということが、この事件の本質です。 地域に根差した塾こそ、より信頼されている分、問題が表面化しにくい傾向もあります。

「日本版DBS(こども性暴力防止法)」とは

制度の概要と目的

2024年6月に成立し、2026年12月25日に施行予定の「こども性暴力防止法(通称:日本版DBS)」は、こどもを性暴力から守るための新しい法律です。 こどもと接する業務に就く人について、国(こども家庭庁)を通じて法務省に照会し、過去に「特定性犯罪(不同意わいせつ、痴漢、盗撮など)」の前科がないかを確認する仕組みです。 これにより、採用段階での「水際対策」が可能になります。

学習塾は「義務」ではなく「認定」

重要なポイントは、学校や保育所が「義務対象」であるのに対し、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者は、国の「認定」を受けることで制度の対象になるという点です。 認定を受けると、性犯罪歴の確認ができるようになりますが、同時に安全確保措置などの義務も発生します。

DBS制度が学習塾経営に与える影響

「3名以上」の教室が認定の対象に

認定を受けるためにはいくつかの要件がありますが、ガイドライン案では「講師等の人数が3名以上(ボランティア等含む)」であることなどが要件として検討されています。 「うちは小規模だから関係ない」と思っていても、3名以上のこどもと関わるスタッフがいれば認定申請が可能です。

「認定マーク」が教室選びの基準になる

認定を受けた事業者は、広告や看板に国の「認定マーク」を表示できます。 今後、保護者が塾を選ぶ際、「認定マークがある=性犯罪対策ができている安全な教室」という基準で選ぶようになる可能性が高く、認定を取得しないことが経営上のリスクになる時代が来ると考えられます。

採用時にできる“今すぐ”の対策と法的準備

制度開始(2026年12月)を待つのではなく、今すぐに取り組むべきことがあります。
特に「就業規則」の準備は急務です。

「就業規則」と「誓約書」の整備(最重要)

もし制度が開始して認定を受けた後に「犯歴あり」と判明した場合、その講師を配置転換あるいは解雇する必要があります。しかし、事前に「性犯罪歴がないこと」を採用条件として明示していなければ、不当解雇などのトラブルになるリスクがあります。 今のうちから、就業規則に「重要な経歴の詐称」を懲戒事由として明記し、採用時に「性犯罪歴がないこと」の誓約書をとる運用を始める必要があります。

面接時の確認強化

• 面接時の記録保存

• 経歴・資格証明の確認と控えの保存

• 空白期間の確認(経歴詐称の防止)

これらはすぐに導入でき、万が一の備えにもなります。

現場の安全を守る「3つの措置」

日本版DBSは「犯歴確認」だけではありません。
日頃の「安全確保措置」もセットで求められます

早期把握(保護者・生徒からの声の吸い上げ)

講師だけでなく、保護者や生徒も安全対策の一員です。 定期的な面談やアンケートを実施し、「嫌なことをされていないか」を日常的に確認する仕組みが、事件の早期発見につながります。

研修と「不適切な行為」の明確化

「どこまでがスキンシップ?」
「SNSの交換は?」

法制度では、性犯罪だけでなく、性暴力につながりかねない「不適切な行為」(密室で2人きりになる、私的にSNSを交換するなど)も防止対象としています。これらを社内ルールとして明文化し、研修を行うことで、講師の意識を高める必要があります。

相談体制の整備

「何かあったら相談できる人」を明確にします。 教室内で起きたことをすべて内部で抱え込むのは危険です。外部の専門家と顧問契約を結び、第三者的な相談窓口として活用する方法もあります。外からの目が入ることで、予防効果は格段に上がります。

まとめ:早めの準備で「選ばれる塾」へ

DBS制度の認定取得を見据えて準備をすることで、「うちはすでに国基準のチェック体制を整えています」と堂々と伝えられるようになります。 これは採用や保護者への信頼獲得にもつながる、塾経営上の大きな“強み”になります。

どれだけ制度を整えても、「守ろう」という意志がなければ意味がありません。
生徒と保護者の信頼に応えるために、まずは小さな一歩から——。

「就業規則の見直し」や「不適切な行為のルール化」など、今できる対策を始めることが、これからの塾運営には欠かせません。


日本版DBS導入支援センターでは、制度の導入支援や、社会保険労務士と提携した就業規則・採用管理体制の整備も含め、一括でサポートをしています。

不安な点や現場での課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。

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