はじめに
2026年12月の施行に向けて準備が進む「こども性暴力防止法(日本版DBS)」。
「夏休みのイベントに1日だけ来るボランティアは対象か」
「スポットで入る短期アルバイトなら確認は不要か」
といった疑問が多く寄せられています。
ガイドライン案では、こうした短期従事者について、「従事期間による例外は設けない」という原則が示されています。
しかし、その一方で「1日だけのスポーツ指導員」は対象外となる例も示されており、判断に迷われる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ガイドライン案の記述に基づき、短期従事者の取扱いについて解説します。
原則:期間による例外は設けられていません
まず、大前提となるルールです。
ガイドライン案には、以下のように明記されています。
「有期労働契約等により従事する期間が短い者(1日、数日等)、ボランティアスタッフ等についても、教員等又は教育保育等従事者に該当する者である限り、従事期間による例外は設けず、対象として取り扱う」
つまり、「1日だけの契約だから」「ボランティアだから」という理由だけで、自動的に法の対象から外れることはありません。
判断の基準は「3つの要件」
ある業務が法の対象となるかどうかは、以下の3つの要件を満たすかどうかで判断されます。
- 支配性
こどもを指導するなどし、非対称の力関係があるなかで支配的・優越的立場に立つこと。 - 継続性
こどもに対して継続的に密接な人間関係を持つこと。 - 閉鎖性
親等の監視が届かない状況の下で預かり、他者の目に触れにくい状況を作り出すことが容易であること。
この3つ全てに該当する業務を行う場合、期間の長短にかかわらず、犯罪事実確認(日本版DBS)の対象となります。
ガイドラインの事例:スポーツクラブのOB(対象外)
ガイドライン案の図表では、「対象外」となる具体的な事例として以下が挙げられています。
事例: 地域のスポーツクラブの練習に、大学生となったOBが、夏休みの1日だけ、ボランティアとして児童等に指導等を行う場合。
理由: このケースが対象外となる理由は、「継続性」と「閉鎖性」の要件を満たさないためと考えられます。 1日だけの技術指導であれば、こどもと継続的に密接な人間関係(継続性)を築くことは想定されにくく、また、通常は監督やコーチなど第三者が同席する環境で行われるため、密室(閉鎖性)の要件も満たさないと判断されます。
なぜ「保育士」や「ベビーシッター」は対象となるのか
一方で、同じ1日だけの勤務であっても、保育士やベビーシッターなどは対象となる可能性があります。その根拠は、ガイドライン案における「継続性」の定義にあります。
定義: 「時間単位のものを含めてこどもと生活を共にするなどして、こどもに対して継続的に密接な人間関係を持つこと」
ここでのポイントは、「時間単位のものを含めてこどもと生活を共にする」という部分です。 保育やベビーシッターのような業務は、食事、排せつ、睡眠の介助など、こどもの生活そのものに関わる業務です。このような業務は、たとえ短時間(時間単位)であっても、その性質上、こどもと「密接な人間関係を持つ」業務であると定義されています。
さらに、ガイドライン案では以下のようにも記載されています。
「法律に明記されている教諭、保育士等のように一般的に継続性をもって児童等に接することが想定されている業務については、(短期・長期の従事であるか否かにかかわらず、)継続性があるものとして判断すること」
つまり、保育士などの特定の職種については、職務の性質上、期間が短くても「継続性がある」とみなされ、法の対象となります。
まとめ
短期従事者の取扱いについては、以下の2つの視点で確認することが重要です。
- その職種が「教員・保育士」等であるか
法律で明記された職種であれば、期間に関わらず対象となります。 - 業務の内容が「生活を共にする」ものか
技術指導のような限定的な関わりではなく、生活のケアを含む密接な業務であれば、「時間単位」であっても対象となる可能性があります。
判断に迷う場合は、「1日だけだから大丈夫」と即断せず、業務の内容が「こどもと生活を共にする密接なものか」という点に着目して検討することをお勧めします。
