【ゼロからわかる日本版DBS #01】認定取得から運用定着までの「全体ロードマップ」

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2026年12月25日、子どもたちを性犯罪から守るための新制度「日本版DBS(こども性暴力防止法)」がいよいよ施行されます。学習塾やスポーツクラブなどの民間教育事業者にとって、この制度への対応は単なる「事務手続き」ではなく、保護者からの信頼を左右する「経営の生命線」となります。

本シリーズでは、日本版DBS導入支援を専門とする行政書士の視点から、認定取得の手順から実務上の留意点、さらには危機管理体制の構築まで、全15回にわたって徹底解説していきます。第1回となる今回は、制度の全体像と、民間事業者が認定を受けることの真の意味について掘り下げます。

目次

はじめに|制度は知っている。でも「いつ・何から」が見えない。

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、制度趣旨や対象の考え方を理解していても、実際に認定取得に向けて動いてみようと思っても、手が止まってしまうということはないでしょうか?
民間教育保育等事業者にとって認定制度は任意である一方、一度認定を受けた瞬間から、法で定める安全確保措置・情報管理措置の“運用義務”が発生します

本シリーズ第1回では、2026年12月25日の施行を見据え、認定取得から運用定着までを「準備期」「申請・移行期」「運用・定着期」の3フェーズで俯瞰し、取るべき手順を整理します。

結論|“いま”着手すべきこと

制度開始時期が近づくほど「申請」だけに目が向きがちですが、実務のボトルネックは申請に向けた準備にあります。当面の優先順位は次のとおりです。

  • 制度開始についての従業員への周知(性犯罪前科の確認対象となる旨等)
  • 対象従業員の範囲の検討・確定
  • 採用フローの整備(採用プロセスにおける性犯罪前科の事前確認等)
  • 性暴力不適切な行為等の範囲の検討
  • 就業規則・服務規律規程類の整備(児童対象性暴力等対処規程/情報管理規程)
  • GビズID等のオンライン手続基盤の準備

これらの準備が整うことが、申請するに当たっての前提条件となります。

施行までのタイムライン|国側の準備と、事業者の準備は並走

こども家庭庁は、施行に向けてマニュアル・研修教材の作成、全国説明会の実施、普及啓発活動、システム開発などを進めることを示しています。
こども家庭庁による説明会が1月中旬から全国各地で行われます。対象事業者の担当の方はまずはそちらに参加されて、全体像を掴むことから始められるとよろしいかと思います(すでに満席となっている会場もありますが、2/13の回はオンライン開催のため制限はありませんので、ぜひエントリーしてみてください)。

認定制度の位置付け|任意だが、認定後は「法定運用」が前提に

学習塾などの民間教育事業は、要件を満たす場合に国へ申請し、認定を受けることができます。
認定されると、国のウェブサイトで公表され、認定マークを表示できる設計です。
また、申請から認定までの目安は約1~2か月、手数料は3万円程度(申請サポートを専門家へ依頼する場合はその報酬は別途)とされ、手続の詳細はすでにマニュアルで示されています。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/bdd8728a/20260109_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_24.pdf

認定事業者に求められる「4つの柱」

制度開始後、認定を受けた事業者には主に次の措置が求められます。

  • 安全確保措置:面談等による早期把握、相談体制、研修など
  • 犯罪事実確認:雇入れ・配置転換等の際に、特定性犯罪前科の有無を確認します
  • 防止措置:性犯罪のおそれがあると認められる場合、従事させない等の措置を講じます
  • 情報管理措置:確認記録等の適正管理、目的外利用や漏えい防止、廃棄・消去、秘密保持を徹底します

重要なのは、これらの「手順書を作って終わり」ではなく、採用・配置・日々の教室運営の業務フローに落とし込むことが肝要だという点です。

3フェーズで整理する「認定取得→運用定着」ロードマップ

フェーズ1【準備期】:現在~アカウント登録開始(予定)まで

申請前の準備で詰まりやすいのは、実は「規程」を作り始めるより前に、現場のオペレーションを変える合意形成です。ここを飛ばすと、施行直前に混乱が起きやすくなります。

(1)対象従事者の範囲を確定します

誰が「児童等に接する業務」に該当するかを棚卸しし、役割・シフト・教室動線も含めて整理します(支配性・継続性・閉鎖性の観点が軸になります)。

(2)就業規則・服務規律・採用フローを先に作り替えます

制度開始後に慌てないために、制度開始前から次の点について整備することが重要です。

  • 服務規律(何が不適切行為か、1対1回避、写真撮影、SNS、密室対応など)を明文化します
  • 採用段階での確認(誓約書・募集要項・内定通知書への明示)を整えます
  • 試用期間の解約事由/懲戒事由の設計(「重要な経歴の詐称」の位置づけ等)を行います

(3)規程類を整備します(対処規程/情報管理)

認定事業者等には、情報管理措置を含め、法が求める管理体制が前提となります。認定後の違反は取消事由になり得るため、雛形の流用ではなく、現場運用に落とし込む必要があります。

(4)GビズID等:オンライン申請の土台を固めます

手続はオンラインが前提であり、なりすまし防止の観点から事業者側のID取得が必須となります。

フェーズ2【申請・移行期】:アカウント登録開始~認定取得後1年

施行後(または開始後)に認定申請が可能になった場合、最初の山は「申請」ではなく認定後に求められる“現職者対応”です。

(1)認定申請~認定まで(目安)

申請→審査(補正含む)→通知→手数料支払い→公表、という流れが示されています。

(2)最大の山場:認定時現職者の犯罪事実確認(認定から1年以内)

認定事業の現職者は、認定等から1年以内に確認が必要です。
この「最初の一括確認」を、授業運営を止めずに回す設計が最重要になります。

(3)新規採用・配置転換:原則は従事開始までに確認(例外=いとま特例)

原則は、内定・内示等から従事開始までに確認を行う設計です。やむを得ない場合には、欠員等で3か月以内、合併・国側遅れ等で6か月以内の特例が整理されています。
ただし、確認が済むまでの間は原則1対1を避ける等の措置が必要と明記されています。

フェーズ3【運用・定着期】:認定取得後1年以降

移行が終わると、以後は「期限管理」と「記録管理」がリスク管理の中核になります。

(1)5年ごとの再確認が必要になります

一度犯罪事実確認を受けた者は、その後5年ごとに再確認が必要です。

(2)帳簿・定期報告・監督対応を前提にします

犯罪事実確認の実施状況や記録等の管理について、帳簿の記載・保存、そして定期的な報告が法定され、必要に応じて報告徴収・立入検査や命令等が予定されています。

(3)廃棄・消去/秘密保持を“仕組み化”します

確認記録等の廃棄・消去や秘密保持は法律上の要件であり、漏えい等があれば是正命令や認定取消しに直結します。
そのため「担当者の記憶」ではなく、アクセス権限・保管場所・削除フロー・監査ログまで含めて仕組み化することが重要です。

専門家の視点|スケジュール管理こそが、最強のリスク管理

日本版DBS対応で一番怖いのは、運用における「漏れ」です。
採用の現場、教室のシフト、記録の保存、アクセス権限、期限管理――いずれも日常業務に埋もれやすいからです。

さらに、制度には認定の取消しや、一定期間の欠格(再申請ができない)につながり得る設計が盛り込まれています。
また、当然のことながら虚偽表示や不正取得、情報漏えい等には罰則規定も置かれています。

だからこそ、第1回で強調したいのは次の点です。

「申請」から考えるのではなく、「運用」から逆算して準備を始めるべきです

無料診断の案内|「認定を取りに行ける状態か」を可視化します

認定取得を目指すなら、「要件を満たすかどうか」を確認することはもちろんですが、“法で課された運用義務をやり切れる体制を構築できるかどうか”という点に重きを置くべきだと私は考えています。

  • 対象従事者の範囲は適切に設定できているか
  • 就業規則・採用フロー・服務規律は日本版DBS制度に対応できているか
  • 対処規程/情報管理措置が、実際の教室運営が回る設計になっているか
  • 期限管理(1年・5年・特例時の暫定措置)がスケジューリングされているか

上記を短時間で点検する「無料診断」を用意しています。
準備の優先順位を誤ると、直前期にコストが跳ね上がります。
早い段階で打ち手を整理しておくことをおすすめしています。

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