【ゼロからわかる日本版DBS #03】いくらかかる?手数料3万円高い?安い?認定のメリットと「本当のコスト」

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「ウチの教室も認定を受けられる条件を満たしているようだ」
「でも、認定を受けるにはいくらかかるの? 手続きは大変?」

前回、認定対象となる条件(期間6カ月以上、対面、事業者が用意した施設、スタッフ3人以上など)を確認しました。

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経営者の方々が次に気になるのは、「コスト」と「それに見合うメリット」のバランスではないでしょうか。

結論から言えば、国に支払う申請手数料自体はそれほど高額ではありません。
しかし、認定を受けるための「本当のコスト」は、お金ではなく「膨大な運用の手間」と「法的責任」にあります。

今回は、専門家(行政書士)としての視点から、認定取得にかかる費用と、見落としがちな「事務負担コスト」、そしてそれに見合うメリットである「認定マーク(こまもろうマーク)」について解説します。

目次

申請手数料は「3万円」に決定

2025年末に公布された政令により、認定申請の手数料が確定しました。

  • 電子申請の場合:30,000円
  • 書面申請の場合:31,500円

日本版DBSの手続きは、原則として「こども性暴力防止法関連システム」を通じたオンライン申請が基本となります。電子申請の方が手数料も安く設定されていますので、GビズIDを取得し、電子申請を行うのがスタンダードになるでしょう。

「3万円で国の認定が取れるなら安い」と思われるかもしれません。しかし、これはあくまで「入り口」の費用にすぎません。

認定を受けるための「本当のコスト」を試算する

認定を受けるということは、単にお金を払ってマークをもらうことではありません。
法律が定める「安全確保措置」を継続的に実施する義務を負うことを意味します
これが、経営者にとっての「本当のコスト(事務負担・責任)」になります。

具体的には、以下の業務が恒久的に発生します。

  1. 体制整備・ルール作り
    ガイドラインの読解、「児童対象性暴力等対処規程」等の作成、就業規則の改定
  2. 現場運用
    全スタッフへの研修実施(1回限りではなく定期的に)、面談・相談窓口の設置と周知、採用時の犯歴確認フロー運用
  3. 定期報告
    国への年1回の実施状況報告

時給1,500円のスタッフが担当しても「20万円」の負担増?

従業員20名程度の教室がこれらを自社で行う場合の工数を簡易的に試算してみました。

制度を理解して規程を作る準備段階から、スタッフへの説明会、一人ひとりの犯歴確認手続き、研修の実施までを含めると、初年度だけで約130時間程度の事務作業が発生すると見込まれます。

【試算条件】

事業規模:講師・スタッフ数20名程度の学習塾またはスポーツ教室

担当者:時給1,500円の事務スタッフ(法務の専門家ではない)

対象期間:認定取得準備から、認定後1年間の運用まで(初年度)

作業工数(計130時間)の内訳

    ◦ 制度理解・規程作成・就業規則改定:50時間

    ◦ 「不適切な行為」の定義・社内調整:20時間

    ◦ GビズID取得・認定申請実務:15時間

    ◦ 現職者(20名)および新規採用者(5名想定)の犯歴確認:25時間

    ◦ 全スタッフ研修・面談・定期報告等:20時間

これを時給1,500円の事務スタッフが行ったとしても、約20万円の人件費コストが発生する計算です。

さらにここには、以下の「見えないコスト」は含まれていません。

  • 経営者の決断コスト
    慣れない法律用語で書かれた規程をチェックし、決済する経営者の時間単価
  • 情報漏えいの法的リスク
    性犯罪歴という極めて機微な個人情報を扱うため、万が一漏えいさせれば「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」等の罰則が科されるリスク
  • 労務トラブルのリスク
    犯歴があった場合の配置転換や解雇にまつわる法的判断の難しさ

これらを考慮すると、社内のリソースだけで対応しようとすることは、見かけ以上の「高コスト」になる可能性があるのです。

最大のメリット:「こまもろうマーク」という信頼の証

では、それだけの手間とコストをかけて、認定を受けるメリットは何でしょうか?

最大のメリットは、「国のお墨付き」であることの可視化です。

こども家庭庁は、認定を受けた事業者が掲示できる「認定事業者マーク(愛称:こまもろう)」を策定しました。

▼こまもろうマーク(認定事業者用) (※オレンジ色を基調に、こどもをしっかり見て守る「フクロウ」をモチーフにしたデザインです)

このマークは、教室の入り口、パンフレット、ウェブサイト、求人広告などに表示することができます。

早速、大手学習塾は認定取得に動き出したことを日本経済新聞が伝えています。

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2026年末の法施行以降、保護者が習い事や塾を選ぶ際、「このマークがあるかどうか」が安全・安心の重要な判断基準になっていくことは確実です。

「選ばれる教室」になるための投資

制度が浸透すればするほど、認定マークのない教室は「なぜ取らないのか?(安全対策にお金をかけないのか、あるいは取れない理由があるのか)」という目で見られるリスクが生じます。

逆に言えば、いち早く体制を整備し、このマークを掲げることは、「こどもの安全を最優先に考える事業者である」という強力なブランディングになります。

3万円の手数料と、運用にかかるコストは、単なる出費ではなく、「保護者からの信頼」を得るための必要な投資と言えるでしょう。

まとめ:専門家への依頼も視野に「賢い選択」を

  • 申請手数料は電子申請で3万円
  • 本当のコストは、人件費換算で20万円相当以上の事務負担と、情報管理等の法的リスク
  • 得られるメリットは、「こまもろうマーク」による信頼と選ばれる理由

「事務負担は重そうだが、生徒の安全と教室の未来のためにやる」と決断された事業者の皆様。

全てを自社で抱え込まず、規程作成や申請手続きなどの専門的な部分は、プロの手を借りるのも一つの「賢い経営判断」です。リスクと手間を最小限に抑え、最短距離で認定取得を目指すことをお勧めします

次回からは、その決断を無駄にしないために、認定を取らない場合のリスクと経営戦略について、もう少し踏み込んで解説します。

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