【ゼロからわかる日本版DBS #09】死角をなくせ!密室・1対1を回避する「環境整備」と物理的対策

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前回(第8回)のコラムでは、日本版DBS認定の最難関ともいえる「児童対象性暴力等対処規程」の作成について解説しました。組織としての対応チームを作り、何が不適切かを定義し、ルールという「ソフト面」での防波堤を築くことの重要性をお伝えしました。

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ただし、どれほど立派なルールブックを作っても、「物理的に性被害が起きやすい環境」が放置されていれば、絵に描いた餅になりかねません。
今回は、認定要件の一つである「施設・事業所環境整備」について深掘りします。

「教室のレイアウトを変えるなんていまさら無理」と思う経営者様もいらっしゃるかもしれませんが、大掛かりなリフォームだけが対策ではありません。ポスター1枚の位置を変えるだけで改善する「死角対策」や、スタッフを守るための「監視カメラ」の考え方など、明日から使える物理的対策を専門家の視点で解説します。

目次

なぜ「環境整備」が義務付けられているのか?

国のガイドラインでは、認定事業者の義務として「施設・事業所環境の整備」が明記されています。これは努力目標ではなく、認定を受けるための必須条件です

性暴力は、人目につかない「死角」や、逃げ場のない「密室」で発生します。加害者は、犯行が見つかりにくい場所を無意識のうちに探しています。逆に言えば、「誰かの目がある」「外から丸見えである」という環境を作ること自体が、最強の抑止力になるのです。

学習塾を例に挙げると、「うちはガラス張りの教室だから大丈夫」と自信を持っておられる場合でも、実際の現場はガラス面に合格実績のポスターがびっしりと貼られ、中の様子が全く見えない状態になっていることがあるのではないでしょうか。これでは「死角」となってしまう恐れがあります。 このように、「見えているつもり」になっているリスクを洗い出すことが、環境整備の第一歩となります。

徹底点検!あなたの教室の「死角」はどこだ?

ガイドラインや横断指針では、過去に性暴力が発生した場所として、以下のようなエリアが挙げられています。

  • 放課後の教室、空き教室
  • 更衣室、トイレ
  • 体育館倉庫、用具室
  • 死角になりやすい廊下の隅、階段の下

特に注意が必要なのは、「児童やスタッフが少なくなる時間帯」です。教室長だけでなく、複数のスタッフで施設内を巡回し、「加害者が隠れられそうな場所」を探すケーススタディを「研修」で行うことも有益です。

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  • 対策①:視界を遮るものを撤去する
    窓ガラスのポスターや掲示物は、腰の高さ以下にするか、室内の様子が見えるように撤去します。本棚やパーティションの配置を変えるだけで、死角が解消されることもあります。
  • 対策②:ミラーの設置
    構造上どうしても死角になってしまう廊下の曲がり角や倉庫の奥には、カーブミラーを設置して「見られている」意識を持たせます。
  • 対策③:鍵の管理と「開けっ放し」
    使っていない部屋は必ず施錠し、鍵を厳重に管理します。逆に、使用中の教室や相談室は、「内側から鍵をかけられないようにする」ことが鉄則です。

大手進学塾では、教室のドアに大きな窓を設置し、廊下から授業風景が自然と目に入るように改修を進めています。これは「監視」ではなく「見守り」のデザインと言えるでしょう。

「1対1」の密室をどう回避するか?

学習塾の個別指導やピアノのレッスン、あるいは進路相談など、業務上どうしても「児童とスタッフが1対1」になる場面があります。ここが最もリスクが高いポイントです。

ガイドラインでは、「原則として、密室内で児童と1対1の状態にならない」ことを求めています。
しかし、そうは言っても個別の相談事はあるでしょうから、そのような場合はどうすればよいのでしょうか。

物理的対策(ハード面)

  • ドアの開放
    面談中やレッスン中は、ドアを少し開けておく、あるいはドア自体を取り払う。
  • 透明化
    ドアや壁の一部をガラス張りにして、外から視認できるようにする(スリガラスはNGの場合も)。

運用的対策(ソフト面)

物理的な改修が難しいテナント等の場合は、ルールでカバーします。

  • 「今から面談します」宣言
    1対1になる際は、他のスタッフに声をかけ、チャット等で開始・終了を報告し合う。
  • 窓のある部屋の限定
    死角の多い奥の部屋ではなく、人の目がある入り口付近の部屋を使用する。

「1対1にならない」というのは、性暴力を防ぐだけでなく、「あらぬ疑いをかけられないため」にスタッフ自身を守る措置でもあります。これを現場に浸透させることが重要です。

監視カメラ(防犯カメラ)は導入すべきか?

「監視カメラをつけると、スタッフを信用していないようで抵抗がある」

そう思う方も多いのかもしれません。
しかし、この制度における監視カメラは「スタッフを守る最強のツール」と位置付けられることができます。

ガイドラインでも、防犯カメラ等の設置は、性暴力の抑止力になるだけでなく、万が一疑いが生じた際の「事実確認(冤罪証明)」に役立つとして推奨されています。

カメラ設置のポイント

  • 設置場所
    死角になりやすい場所、1対1になる面談室、廊下など。
  • プライバシーへの配慮
    更衣室やトイレの「内部」を映すのはNGです。ただし、「出入り口」に向けて設置し、誰がいつ入ったかを記録することは非常に有効です。
  • ルールの明文化
    「常時監視して評価に使うものではない」「事案発生時のみ確認する」といった運用ルールを定め、スタッフや保護者に説明することで、導入のハードルを下げることが可能です。

施設外活動・送迎バスの注意点

教室の中だけではありません。
スポーツクラブの遠征や合宿、学習塾の送迎バスも「密室」のリスクが高い場所です。

  • 送迎バス
    運転手が1名の場合、車内は密室化します。ドライブレコーダー(車内撮影対応)の設置は必須と言えるでしょう。
  • 合宿・遠征
    引率は必ず複数名体制にし、部屋割りや入浴指導のルール(異性の部屋に入らない等)を徹底します。

結論:ハードとソフトの両輪で「隙」をなくす

認定取得のための環境整備とは、リフォームありきの話ではありません。

「どこにリスク(死角・密室)があるか」を知り、それを物理的に、あるいは運用ルールで一つずつ潰していく作業です。

「ポスターを剥がす」
「ドアを開ける」
「カメラを置く」

保護者様が教室を訪れた際、「ここは見通しが良くて安心できるな」と感じてもらえる環境作りは、結果として教室の信頼性を高め、経営的なプラスにも働きます。

次回(第10回)は、いよいよ具体的な申請手続きに向けた「GビズIDの取得とシステム利用の準備」について解説します。ここからはパソコンを使った事務作業の話になりますが、つまずきやすいポイントを先回りしてお伝えします。

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