【ゼロからわかる日本版DBS #18】緊急対応!すぐに人を雇いたい時の「いとま特例」活用法「明日から来て」の代償とは?

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前回(第17回)は、万が一「犯歴あり」の結果が出た場合の対応について解説しました。

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【ゼロからわかる日本版DBS #17】「犯歴あり」の通知が届いたらどうする?配置転換・内定取消の法的ルール 犯歴確認で「あり」と出た場合、本人の訂正請求期間(2週間)を経て事業者に通知されます。事業者は対象者を「こどもと接する業務」から外す義務(防止措置)を負います。内定者は取消しが可能ですが、現職者は配置転換が原則となり、即解雇は法的リスクがあります。

今回は、現場の経営者様から最も多く寄せられるであろう、「緊急時の採用」に関する特例措置についてお話しします。

「講師が急病で辞めてしまった。明日から代わりの先生が必要だ!」
「予想以上に生徒が増えて、来週からクラスを増設しないと回らない!」

第16回で解説した通り、日本版DBSは「確認完了まで現場に出せない」のが原則です。システム照会には約2週間かかります。では、上記のような緊急事態でも、2週間待たなければならないのでしょうか?

実は、こども性暴力防止法にはこうした緊急時に備えて、「いとま特例(確認を行ういとまがない場合の特例)」という仕組みが用意されています。しかし、これは「無条件ですぐに雇える」という甘いものではありません。

今回は、この特例を使うための条件と、期間中に課せられる「非常に厳しい行動制限」について解説します

目次

「いとま特例」とは?

「いとま特例」とは、急な欠員などのやむを得ない事情により、業務開始までに犯歴確認を完了させる時間的余裕(いとま)がない場合に限り、「働き始めた後に確認を行えばよい(事後確認)」とする制度です

業務に従事させた日から3ヶ月以内(災害時等は6ヶ月以内)に確認を行えばOKとされています。

一見すると便利な制度に見えますが、法律には続きがあります。

「ただし、犯罪事実確認を行うまでの間は、その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならない」

つまり、確認結果が出るまでの間は、そのスタッフを「性犯罪歴がある人(クロ)」と同じ扱いにし、厳重な監視下に置かなければならないのです

どんな時に使える?(OK例とNG例)

この特例は、単に「手続きを忘れていた」という理由では使えません。
ガイドラインで認められる「やむを得ない事情」は厳しく限定されています。

【OK】認められるケース(例)

  • 急な欠員:予期せぬ退職、病気、死亡などにより、急遽代わりのスタッフが必要になった場合。
  • 予想外の増員:生徒数が急増し、緊急にクラスを増やす必要が出た場合。
  • 契約の遅れ:派遣会社との契約締結が遅れ、スタッフの決定が直前になった場合(派遣先・学校等の責めによらない場合)。
  • システム遅延:余裕を持って申請したのに、国のシステム遅延等で結果が間に合わなかった場合。

【NG】認められないケース

  • 計画不足:定年退職など、あらかじめ分かっていた欠員なのに、採用活動が遅れた場合。
  • 単なる失念:制度を知らなかった、申請を忘れていた場合。

特例期間中の「厳しい制限(必要な措置)」

ここが今回のハイライトです。
特例を使って「確認完了前に」現場に出す場合、事業者は以下の措置を講じることが法的義務となります。

原則「1対1」にしてはいけない

そのスタッフは、法的に「性犯罪歴があるかもしれない」という前提で扱われます。
したがって、原則として児童等と1対1になる状況を作ってはいけません。

  • シフト調整:必ず他のスタッフがいる時間帯・場所に配置する。
  • 物理的対策:死角のない場所で業務を行わせる。
  • 管理職の巡回:管理者が定期的に見回り、声掛けを行う。

どうしても1対1になる場合(例外)

「ピアノの個室レッスン」や「相談室でのカウンセリング」など、業務の性質上どうしても1対1が避けられない場合に限り、例外的に認められますが、以下の対応が必須です。

  • 事前報告:「いつ、どこで、誰となぜ1対1になるか」を事前に管理者に報告し、了解を得る。
  • 可視化:防犯カメラがある部屋や、ガラス張りの部屋を使用する。
  • 事後報告:業務終了後、問題がなかったか管理者に報告する。

本人への説明と研修

特例を適用するスタッフ本人に対し、「特例の対象であること」「期間中は1対1が禁止されること」「違反したら処分の対象になること」を書面で説明し、業務開始前に研修を受けさせる必要があります。

記録と報告の義務

「いとま特例」を使用したことは、記録に残し、国に報告する必要があります。

  • 証拠書類の保存:なぜ特例を使ったのか(例:急な退職届の写し、急増した生徒数データなど)を証明する書類を保存しなければなりません。
  • 定期報告:年に1回行われる国への定期報告で、「いとま特例を何人に適用したか」「どのような措置を講じたか」を報告します。

まとめ:緊急時だけの「最後の手段」

「いとま特例」は、決して「使い勝手の良い抜け道」ではありません。

「常に監視の目が必要」「シフト調整が大変」という重いコストがかかるため、現場の負担は通常よりも増します。

  1. 基本は余裕を持った採用計画を立てる。
  2. どうしても間に合わない時だけ、厳しい制限付きで特例を使う。

このスタンスで運用することが、教室のリスク管理として正解です。

さて、ここまでで「人(スタッフ)」に関する運用フローは一通り解説しました。
次回からは、もう一つの重要な柱である「情報(データ)」の管理について解説します。

「犯歴データはいつまで持っていていいの?」「紙で保存しちゃダメ?」といった、情報漏えいリスクに直結するテーマを扱います。

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