副業やフリーランスでよくある「雇用?業務委託?」問題
副業やフリーランスとして活動を始める方が増える中で、よく聞かれるのが「この契約、雇用契約?それとも業務委託?」という疑問です。
企業も個人も、契約の形式を誤解すると思わぬ法的トラブルに発展することがあります。たとえば、業務委託のつもりで契約したのに、実態が雇用契約とみなされ「偽装請負」と判断されるケースもあります。
この記事では、行政書士の立場から、業務委託契約と労働契約の違いをわかりやすく解説します。
業務委託契約と労働契約は何が違う?
法律上の位置づけ(民法と労働法の違い)
労働契約は「労働基準法」など労働法によって保護される関係であり、雇用主と労働者の間に指揮命令関係が存在します。
一方、業務委託契約は「民法」に基づく契約で、委託者と受託者が対等な立場で仕事を請け負うものです。つまり、業務委託契約では「成果物を納品して報酬を受け取る」関係になります。
「指揮命令関係」があるかどうかが最大のポイント
雇用契約では、会社が労働時間・場所・業務内容を具体的に指示できます。
一方で業務委託では、受託者が自らの判断で仕事の進め方を決めるのが原則です。発注側が細かく業務内容や勤務時間を指定すると、形式上は業務委託でも「実質的には雇用」と判断されるおそれがあります。
報酬の支払い方・労働時間・責任の違い
【雇用契約】
- 労働時間に応じた**「給与」**が支払われる。
- 労働保険や社会保険が適用される。
- 業務の最終責任は会社(雇用主)が負う。
【業務委託契約】
- 成果物の納品に対して**「報酬」**が支払われる(原則)。
- 国民健康保険や国民年金に自分で加入する。
- 業務の遂行責任は原則として受託者(自分)が負う。
業務委託契約が「実質的に雇用」と判断されるケース
業務委託か雇用かの判断は、契約書の形式ではなく「実態」で判断されます。厚生労働省も「労働者性」の判断基準を公表しており、以下の点が総合的に考慮されます。
厚生労働省ページ(労働基準法における「労働者」とは)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index02.html
会社の指示に従って働いている
業務委託契約でも、実際には上司から毎日業務指示を受けていたり、勤務時間が固定されていたりすると、雇用契約と判断される可能性があります。
勤務時間や場所が拘束されている
業務委託は「いつ・どこで・どう働くか」を自分で決められることが原則です。しかし、発注側が「9時から17時は必ず出社」「自社端末を使うこと」などを強要すれば、雇用関係とみなされることがあります。
報酬が労働時間ベースになっている
成果に対してではなく、時間単位(時給・日給)で報酬が支払われている場合、実態としては雇用契約に近い構造になります。
これが“偽装請負”と呼ばれる状態
形式上は業務委託(請負)契約なのに、実態が「労働者派遣」にあたる場合、それは「偽装請負」と呼ばれ、労働者派遣法違反に問われる可能性があります。
さらに、派遣ですらない「実質的な雇用(労働契約)」と判断された場合、企業側は労働基準法に基づく残業代の支払いや社会保険の加入義務を負うことになります。
副業・フリーランスが注意すべき3つの法的リスク
① 労働者性が認められた場合のトラブル
実態が雇用契約と判断された場合、発注側には労働基準法が適用されます。
未払い残業代請求や社会保険加入義務が発生することもあります。
② 業務委託契約では労働基準法が適用されない
業務委託契約では、労働時間・休憩・休日・残業などの規定は適用されません。
すべて自己責任で管理する必要があります。
③ 雇用保険・社会保険・税務上の扱いが異なる
雇用契約では会社が社会保険料を負担しますが、業務委託では自分で国民健康保険や国民年金に加入します。また、確定申告も自ら行う必要があります。
行政書士が解説!契約書で確認すべき5つのチェックポイント
- 契約の目的と範囲は明確か
- 契約の目的(何を、どこまで行うのか)が不明確だと、トラブルのもとになります。
- 業務の成果物・納期・報酬が具体的に定義されているか
- 成果型なのか時間給型なのか、支払い条件を明確にしましょう。
- 指揮命令関係を示す文言が含まれていないか
- 「発注者の指示に従う」といった表現があると、雇用とみなされるリスクがあります。
- 契約解除・損害賠償の条項は妥当か
- 双方の責任範囲を明確にし、不当なペナルティを避けましょう。
- 競業避止義務や守秘義務の内容が過度でないか
- 副業者・フリーランスにとって、競業禁止条項は活動の幅を狭めます。期間や範囲を現実的に設定することが大切です。
これらのポイントを自分だけで判断するのは困難です。当事務所では、フリーランス・起業家向けの「契約書レビュー・作成サービス」を提供しています。
実体験:私が見た“雇用と業務委託の境界線があいまいな契約”
以前、契約書のレビューを依頼されたケースで、企業が外注契約として出していた契約書を確認したところ、勤務時間の指定や業務指示に関する条項が含まれていました。これは明らかに「実質的な雇用」に近いものでした。
条文を修正し、成果物基準の契約に改めたことで、企業側も安心して契約を進めることができました。契約書は、形式よりも中身が重要です。契約当事者の実態に合った契約形態を整えることが、トラブル予防の第一歩です。
まとめ:契約形態を理解して、自分を守ることが第一歩
契約書は単なる形式ではなく、自分の立場を守るための「盾」です。業務委託か雇用か――その違いを正しく理解し、契約書で明確にしておくことが、後々のトラブル防止につながります。
不安がある場合は、行政書士など専門家に契約書のチェックを依頼しましょう。
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